トランプ米大統領は、家族と共に経営に関与する暗号資産の事業体「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)」の取り組みから5740万ドル(約83億円)の利益を得ていたことが、6月13日の開示資料で判明した。この開示資料2024年12月までの1年間を対象としたものだ。
トランプは、3人の息子の関与のもとで2024年9月に、この分散型金融(DeFi)のプラットフォームを立ち上げていた。WLFは、所有者にプロジェクトの方向性を決める投票権(ガバナンス権)を付与するための「$WLFI」と呼ばれる譲渡不可能なトークンに加えて、「USD1」と呼ばれる米ドルに連動したステーブルコインなどを販売して収益を上げている。
トランプとその家族は、225億枚の$WLFIトークンを保有するLLC(有限責任会社)を通じて、WLFの約60%の支配権を握っている。また、このLLCはトークン販売の収益の75%を受け取る権利を持つと、同社のウェブサイトに記載されている。
トランプは大統領就任後も自身のビジネスから利益を得られるようにするために、自身が唯一の出資者かつ受益者である「撤回可能信託(revocable trust)」を通じて事業を管理している。このスキームは、彼の1期目の在任中にも使われていた。
トランプは大統領として、米国を「世界の暗号資産の中心地」にすると誓っているが、このスタンスは、彼自身のデジタル資産への個人的な投資の拡大とも一致している。WLFのようなブロックチェーンベースの金融プラットフォームは、伝統的な銀行を介さずに資産の移転や取引ができる分散型の金融システム、DeFiの拡大を目指している。このようなプラットフォームは、銀行口座を持たない人々や迅速な取引を求める人々、金融機関の規制を避けたいユーザーらを惹きつけている。
一方、WLFが発行するUSD1のようなステーブルコインは、米ドルを含む法定通貨に価値が連動する暗号資産で、DeFiプラットフォームと同様に従来の金融に代わる手段として関心を集めている。ステーブルコインの発行者は通常、ユーザーからの預かり資産を運用し、その収益を利益としている。
WLF共同設立者のザック・ウィットコフは5月1日、アブダビに拠点を置く投資会社MGXがステーブルコインUSD1を使って、暗号資産交換所バイナンスに20億ドル(約2890億円)を出資すると明らかにした。



