他方で、海外からの投資を誘致することで、政府にとっては切実に必要な財源が増えるため、こうした投資による居住権制度の魅力を無視するのは難しい。英国は最近、新たなゴールデンビザ制度の開始を検討していることを明らかにしたが、新制度では、同国の経済回復に不可欠な特定分野に利益をもたらす場合に限られる見通しだ。
スペインが廃止した今、ポルトガルのゴールデンビザに人気が集中
スペインのゴールデンビザ制度を巡っては、住宅価格の上昇に対する地元住民の抗議が相次ぎ、EU当局からも懸念が示されていた。同国政府は数カ月間にわたる検討を重ねたのち、今年4月に同制度を廃止した。
多くのEU諸国と同様、スペインも深刻な住宅不足に悩まされている。同国は、旅行者向けの短期賃貸を厳しく制限し、外国人の不動産購入に100%の税金を課すことで、地元住民の住宅不足を改善しようとしている。この政策により、過激な大規模デモを引き起こしてきた地元住民と観光客の摩擦が減るかもしれない。
ポルトガルのゴールデンビザ制度に対する批判
ゴールデンビザ制度は、外国人富裕層に居住権を「購入」することを許すものだと批判する声もある。それによって富裕層を優遇し、万人の平等を追求するEUの理念に反するとの意見もあり、同制度は批判にさらされている。ゴールデンビザはマネーロンダリング(資金洗浄)や組織犯罪に利用される可能性があるとの指摘もある。
経済的な観点からは、ゴールデンビザ制度は不動産価格を不当に吊り上げ、地元の人々にとって住宅が手に入りにくくなる一方で、富裕層による不動産購入の資金は主に一部の特権階級を利するのみだとの批判がある。スペインはこれを理由にゴールデンビザ制度の廃止に踏み切った。
他のEU諸国がゴールデンビザ制度の廃止に向かう中、ポルトガルは恵まれた気候と住みやすく活気のある都市により、外国人から人気を集めている。ポルトガル政府が制度の内容を充実させれば、これまで以上に需要が高まることは明らかだ。


