気候・環境

2025.06.20 08:15

人口が減少しても生物多様性が損失していくメカニズム

地球に生息する野生生物は、1970年以降73%も失われる一方で、人口は倍増し現在は80億人を超えている。こうした人口増加と経済成長により、生態系が破壊されたことで、多くの野生生物が失なわれてきたことは、これまでの研究によって明らかになっている。

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ところが、近年は先進国において人口減少に転じており、これにより生態系が回復するのではと期待されている。そこで、東京都市大学の環境学部環境創生学科の内田圭准教授、英国シェフィールド大学のピーター・マタンル(Peter Matanle)上級講師およびヤン・リ(Yang Li)博士研究員、公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J)の藤田卓チームリーダー、近畿大学農学部の平岩将良博士研究員(当時、現 近畿大学研究支援者)の研究グループは、生物多様性に対し人口増減がもたらす影響(恩恵ならびに損失)について調査を実施し、その結果を「Nature Sustainability」で2025年6月12日(米国東部時間)に電子出版として公開している。

それによると、日本全国158地点の里地里山の環境において、鳥、チョウ、ホタル、カエルの卵塊を含む450種以上、および約3,000種の植物を対象とした「モニタリングサイト1000里地調査」によって得られた中長期にわたる生物種数、個体数の変化と、人口・土地利用の変化との関係を解析。その結果、人口減少が日本の里地里山の生物多様性の損失につながる可能性があり、自動的に生物多様性の回復を促すという仮説は、日本の里地里山においては支持されていないことが明らかになった。

特に鳥類やチョウ類でその傾向が顕著で、人口が減少しても個体数は増えず、鳥類は人口増加によって大きく個体数を減らしているものの、チョウ類に関しは、人口増加とともに個体数が増加しており、人口の減少が生態系復活につながるとは一概には言えないようだ。

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これは、人口減少によって里地里山における管理の放棄によって草地や農地が森林化する遷移が進んでしまい、生物によっては逆に住みづらくなってしまうためだ。また、人口が減っても土地開発だけは進み、それによっても生物が住みづらい環境になっていることも要因だとしている。

今回の調査・分析によって、里地里山景観においては、生物多様性を維持するための人間の生業の持続が重要であり、人口減少による生物多様性の恩恵を享受するためには、環境との関係を長期的にモニタリングし、積極的な管理が求められる。そして、世界中の国々が生物多様性の保全・回復戦略を作成する際に、人口増減の影響を考慮すべきだと結論付けられている。

出典:NACS-J「日本全国158の里地里山を対象としたビッグデータ解析による研究結果」より

文=飯島範久

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