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2025.06.17 09:00

ブラック求人に騙されるな ! 一人8役の過重労働で社員を壊す「オクト・ハイヤー」の正体

Shutterstock.com

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筆者は先日、Forbes.comで過労死(karoshi)についての記事を書き、慢性的な仕事の過負荷が、いかに精神や肉体の健康状態を悪化させ、キャリアを終わらせ得るかについて説明した。燃え尽き症候群は急増しており、米国労働者の生産性を低下させている。

こうしたことが起きている一方で、米国の企業に関する口コミサイトを運営する「Glassdoor(グラスドア)」は、「オクト・ハイヤー(octo-hire:一人8役の社員)」という不健全なトレンドを指摘している。時間、エネルギー、リソースが限られたなかで、度を過ぎた緊張を強いられつつ、8つの役割をこなそうとする従業員は、必然的に燃え尽き症候群になってしまう。

オクト・ハイヤーとは何か? 新卒者は要注意

採用担当者は時として、求職者に対してバラ色に見える非現実的なポジション像を示すことがある。求職者の多くは立場が弱く、良い仕事に就きたいと熱望している新卒者だ。そして彼らは、オクト・ハイヤーになる危険性にさらされる。働き手として無理に背伸びをしすぎて、複数の役割をこなし、自分の頭では処理しきれないほど多くの責任を抱え込み、そのバランスを取ろうと奮闘するわけだ。

働き手がしばしばオクト・ハイヤーのポジションに引き入れられるのは、企業がその職務にまつわる全ての責任を開示せず、求職者をだますときだ。疑うことを知らない新入社員は、知らず知らずのうちに複数の役割を背負わされ、過負荷と過労に見舞われてしまう。

「だまし」の釣り針に食いついたとき、オクト・ハイヤーはしばしば「シフト・ショック」を経験する。シフト・ショックとは、新しい職務が、雇用主が職務概要で説明していた範囲をはるかに超えていることに気づいたときのフラストレーションのことだ。通常は、誤解を招くような、あるいは不十分な採用プロセスの結果として起こる。

求職者のための情報を提供する「Tne Muse(ザ・ミューズ)」の「シフト・ショック調査」によると、こうしたショックを経験したことがあると答えた者は、回答者の72%に上る。

人材評価サービスを提供するCriteria(クライテリア)の創設者でもあるジョシュ・ミレーCEOは、シフト・ショックというトレンドの原因の一つは、現在の求人市場において、大学新卒者が自分の専攻コースに合った役割を得るのに苦労していることだと考えている。そして彼らは、大学で取った学位が生かせそうにない仕事に就く。

「希望する仕事が見つからない求職者と、適切な人材を見つけることに苦労している雇用主が相まって、不満の多い市場になっている」とミレーは述べる。企業が採用プロセスにもっと投資して、こうした状況を避けるようにすれば、求める職務に合致したスキルを持つ候補者を見つけられる可能性が高くなる、とミレーは付け加える。

その一方でオクト・ハイヤーの採用は、燃え尽き症候群の増加に拍車をかけている。グラスドアによると、同サイトの従業員レビューでは燃え尽き症候群に関する言及が32%急増して過去10年間で最高水準に達している。まるでオクト・ハイヤーが、「ニューノーマル」であるかのような状況だという。

グラスドアでは、一人で3~4人分の従業員の役割を果たすオクト・ハイヤーを見分けることに役立つよう、3つの例を紹介している。

1. 出張のスケジュールを組み、壊れたコーヒーメーカーを修理し、会社の研修旅行でリーダーを務めるエグゼクティブ・アシスタント

2. ソーシャルメディアアカウントへの投稿と、コピーライティングをするグラフィックデザイナー

3. ブログ記事を書き、クライシス・コミュニケーションの管理も行うマーケター

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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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