トランプ予算を覆す「クルーズ予算」
予算要求案はあくまで大統領の方針を示すものであり、その後この草案は上下院でそれぞれ個別に審議される。その一環として6月6日、NASAを管轄する上院の商業委員会が予算調整法案を発表したが、そこにはNASAに対する99億9500万ドル(約1兆4393億円)の追加予算が記されていた。これはトランプの削減案に大きく逆らうものだ。
この法案は2025年度の補正予算案に関するもので、その内訳はSLSロケットに41億ドル(約5904億円)、オリオン宇宙船に2000万ドル(約28億8000円)、ゲートウェイに26億ドル(約3744億円)の追加予算をつけるというもの。トランプの予算案ではSLSとオリオンはアルテミス3を最後に廃止される予定だが、上院の調整法案ではアルテミス5までの運用を提言する。
また、「火星通信オービター」に7億ドル(約1008億円)の補正予算が付いているのは、火星サンプルリターンミッションの継続支持を意味する。トランプ予算ではISS(国際宇宙ステーション)に対しても大幅な予算削減を要求しているが、その運用にも12億5000万ドル(約1800億円)を追加するとある。これらの資金は段階的に予算化され、2032年まで使用可能な支出とすることを提案。これによってトランプが中止しようとする計画の一部が継続される可能性が出てきた。
ただし、予算請求案を審議するのはあくまで上院議会であり、商業委員会が発表した予算調整法案はいわばその補足提案にすぎない。しかし、商業委員会の議長によるこの提案は今後の上院の方針を示す。商業委員会の管轄は、日本の国土交通省、文部科学省、経済産業省の3省庁に主に該当する。その議長はテキサス州選出のテッド・クルーズ。同州にはNASAの主要施設であるジョンソン宇宙センターがあり、ここは主に有人ミッションを管轄する。SLS、オリオン、ゲートウェイ、ISSはすべて有人ミッションに関係することから、クルーズがそれを支える人員の雇用を守ろうとしていることがうかがえる。


