マスクの堪忍袋が破裂した理由
NASAの予算削減案に対してマスクは「憂慮すべき事案」としてコメントしたが、彼の不満は別にあったと米アクシオスが報じている。そのひとつはトランプが標榜する「大きくて美しい法案」だ。2026年度予算と並行して議会での審議が進むこの大型減税・歳出法案は、5月22日に下院で可決され、上院で審議される段階へと進んでいる。マスクはこの法案に関して、テスラなどEV(電気自動車)開発企業に対する補助金を望んでいたが、その条項は含まれていない。
また、老朽化した航空管制システムの改修に際して、スペースXの通信衛星「スターリンク」を組み入れるようマスクは嘆願しているが、FAA(米連邦航空局)が認可しない状態が続いている。
こうした状況のなか、マスクはDOGE(政府効率化省)での職務を終え、5月30日にはホワイトハウスで退任会見が開かれた。そもそもマスクは特別政府職員として年間130日以内の勤務を前提に着任しており、その任期が満了したのだ。この場でトランプから「黄金の鍵」が授与された時点では、マスクはまだ平静を保っていた。
しかし、マスクが退任した翌日の5月31日、アイザックマンのNASA長官指名が突如として撤回された。おそらくマスクの堪忍袋が破裂したのはこの瞬間だろう。
アイザックマン指名撤回の理由
弱冠42歳のアイザックマンは電子決済事業で財を成したビリオネア(資産家)であり、軍用パイロットの養成学校の創設者でもある。民間人として史上初めて船外活動(宇宙遊泳)を実現させた人物であり、スペースXの宇宙船クルードラゴンを自費でチャーターする彼は、マスクにとっては大口のクライアントでもある。
アイザックマンをトランプにつなぎ、NASA長官に推したのはマスクだった。しかし、マスクがDOGEを去ると同時に、アイザックマンの長官指名の撤回が発表された。ホワイトハウスの報道官は、「NASA長官は大統領のアメリカ第一主義に完全に合致する人物であることが不可欠」だと説明した。
6月4日、アイザックマンはYouTubeの「All-In Podcast」にライブ出演した際、以下のように語った。「NASAが進行する事業には小規模なプロジェクトが多すぎる。それらは民間企業に任せ、NASAは原子力電気推進など民間にはできない事業に専念すべきだ」


