暗号資産

2025.06.14 09:00

サトシ・ナカモトからドナルド・トランプへ 新たな熱狂に飲み込まれる「ビットコイン」

ビットコインカンファレンス「Bitcoin 2025」の基調講演で登壇したJ.D.ヴァンス副大統領(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

サトシ・ナカモトは、どこかで見ているだろうか?

筆者はイベントの間にずっと考えていた。ビットコインの生みの親とされるサトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)は、これを見てどう思うだろうか? もしかしたら彼もどこかで見ているかもしれない。だが、笑っているとは思えない。

advertisement

古くからの純粋主義者のビットコイン愛好者は、XRPやSuiのような中央集権色が強く、「体制寄り」とされる暗号資産のプロジェクトがスポンサーに名を連ねていることに不満を漏らしていた。著名なパネルディスカッションのトピックには、ステーブルコインやトークン化が含まれていた。

「ビットコインは、国家と通貨の分離につながるものだったことを忘れてはいけない。国家を招き入れるべきではない。国家が何世紀にもわたって人々に与えてきた痛みや苦しみ、殺戮、飢餓、搾取を忘れるな。ビットコインは国家からわれわれを解放したんだ」と、ある観客は怒りをぶつけた。

もっとも、こうした内部の対立や内輪もめは、暗号資産業界の外ではほとんど話題にもならない。このカンファレンスやビットコインは、今では反逆的なルーツを超えて、初期の支持者の想像を超えるほど巨大になってはるかに騒々しくなり、国家の制度の中に組み込まれているのが現実だ。

advertisement

イベント終幕を飾るクロージングスピーチは、「シルクロード」のウルブリヒト

注目の来場者には、ビリオネアのマイケル・セイラーや、トランプの暗号資産事業に多額の出資を行うジャスティン・サン、ロビンフッドのブラッド・テネフCEO、テザーのパオロ・アルドイノCEO、SECのヘスター・パース委員、複数の連邦議会議員、そして大統領直属の暗号資産諮問会議の責任者にあたるボー・ハインズなど錚々たる顔ぶれが揃った。

イベント最後に全体を締めくくる目玉プログラムとして、「シルクロード」のウルブリヒトが、釈放後初の公の場でクロージングスピーチを行った。

カンファレンスで注目された、3つの「公認」に至る道

今回のイベントで目立っていたテーマは3つある。そのひとつ目は、企業の財務戦略としての暗号資産の保有、いわゆる「クリプト財務」への注目だ。現在、ビットコインを保有する上場企業は70社以上あり、ソラナやイーサリアム、XRPをバランスシートに加える企業への注目も高まっている。

ふたつ目は、立法の進展だ。ステーブルコインに特化した「GENIUS法案」は議会を通過する見込みだ。「市場構造法案(Market Structure Bill)」も期待されており、これらは米国の暗号資産業界全体に明確さと法の枠組みを与える可能性がある。

そして3つ目が、暗号資産のメインストリームへの浮上だ。かつては金融システムからの脱出手段とみなされていたビットコインが、今やその中に取り込まれつつある。政治家の選挙公約となり、国家が購入する資産となり(パキスタンでもビットコイン準備金を設ける計画が浮上した)、企業が財務戦略に組み込む対象になっている。

「国家の支援があってこその分散化」という逆説

ソフトバンク、ステーブルコイン大手のテザーなどが共同設立したビットコイン投資会社「Twenty One Capital(トゥエンティワン・キャピタル)」のジャック・マラーズCEOは、筆者にこう明かした。

「トランプがやっていること全部を支持するかと聞かれたら、ノーと言うだろう。私が大統領だったらもっと違うやり方をすると思う。でも、トランプ政権がこれまでの暗号資産業界に対する不必要な制限を取り除いたことは、良いことだと思う」。

彼の言うことはおそらく正しいのだろう。結局のところ、トランプ政権がビットコイン準備金構想を推進したことや、この業界全体を丸ごと受け入れたことによって、これまで以上に多くの人々がビットコインを知り、利用するようになった。

結局のところ、分散化というものは、国家の支援があってこそ最大限にスケールするのかもしれない。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事