世界で大ヒット中の「ラブブ」のぬいぐるみで知られる中国の玩具メーカー、POP MART(ポップマート)の創業者で会長の王寧(ワン・ニン)が初めて中国の富豪ランキングでトップ10入りを果たした。
フォーブスのリアルタイム・ビリオネア・リストによると、POP MARTの保有株に基づく王の保有資産は6月12日時点で227億ドル(約3兆2600億円)に達した。現在38歳の彼は、バイトダンス創業者の張一鳴(チャン・イーミン)や農夫山泉の会長の鍾睒睒(ジョン・シャンシャン)、テンセントの共同創業者の馬化騰(ポニー・マー)らが並ぶ中国の富豪の上位10人に、最年少でランクインした。
香港市場に上場するPOP MARTの株価は、年初から3倍以上に上昇し、270香港ドルを突破した。オランダ生まれで香港を拠点とするアーティストのカシン・ルンによってデザインされたラブブのフィギュアは、世界中のセレブにも人気で、リアーナやデュア・リパ、BLACKPINKのリサなどがコレクターに名を連ねている。
北欧神話から着想を得たとされる小さなモンスターであるラブブのぬいぐるみは、入手困難になることも多く、一部の店舗で混乱を引き起こしている。先日はラブブの等身大のフィギュアが、北京で開かれたオークションで108万元(約2200万円)という驚異的な価格で落札された。
中国の平安銀行は、新規口座を開設して5万元(約10万円)以上を預け入れた顧客にラブブを進呈するキャンペーンを実施したが、この取り組みは「預金獲得のための不適切なインセンティブ」にあたるとして、金融当局により最近中止された。
ラブブの人気を背景に、ドイツ銀行やモルガン・スタンレーなどの投資銀行はPOP MARTの株価目標を大幅に引き上げている。ドイツ銀行は海外市場での成長の勢いを理由に、同社の目標株価を52%引き上げて303香港ドルとした。
しかし、すべてのアナリストがこの人気が長続きすると考えているわけではない。「長期的観点から見ると、POP MARTの株価は割高だ」と、モーニングスターの香港拠点の株式アナリストのジェフ・チャンは指摘し、「消費者の関心が他社のアイテムに移るリスクも高い」と述べている。
株価は割高
エバー・ブライト証券の香港拠点のストラテジストのケニー・エンも、POP MARTの株価が割高だと指摘し、時価総額が3650億香港ドルの同社の株式が、2025年の推定利益の50倍を大きく上回るPER(株価収益率)で取引されていると指摘した。
同社は、2025年の最初の3カ月間の売上高が前年同期比で最大170%増加したと具体的な金額には触れずに、4月の第1四半期の速報で明らかにしていた。
POP MARTは以前、2025年の通年の売上高が前年から50%以上伸びて200億元を突破する見通しだと以前の予測で述べていた。同社は昨年、前年比107%増の130億元の売上高を記録し、純利益は約180%増の31億元だった。
「株価が少し下がれば投資の好機になるかもしれないが、現状では決して割安とは言えない」とエバー・ブライトのエンは語っている。



