1970年代に「不動産王」と呼ばれたドナルド・トランプは、2000年代に入るとテレビの司会者として知名度を上げ、2016年の大統領選で勝利して以降はソーシャルメディアの大物となった。そして今彼は、暗号資産業界の中心人物になっており、保有資産約55億ドル(約7870億円)のうち、推定33億ドル(約4720億円)が、ビットコインへの巨額投資を進める企業の株式や暗号資産そのものによって構成されているとフォーブスは試算している。
トランプが立ち上げたSNSの運営会社「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)」は5月末、事業戦略の変更を発表し、ビットコインの投資企業に変貌を遂げた。TMTGは当初、ツイッターやフェイスブックを追放されたトランプに発言の場を提供するためにSNSの「トゥルースソーシャル」を立ち上げた。しかし、このSNSは大きなビジネスにはならず、年間収益が約400万ドル(約5億5700万円)に対して損失は1億ドル(約143億円)を超えていた。
それにもかかわらず、投資家はTMTGの株式に殺到し、時価総額は約57億ドル(約8150億円)に達した。そして同社は先月、財務基盤を強化する目的でビットコイン投資を主要な事業とする方針を発表。新株の発行を通じて、50以上の機関投資家から20億ドル(約2860億円)以上を調達した。
この動きによって、TMTGは暗号資産への賭けを行う企業に一気に変貌した。フォーブスは、トランプが保有する同社株の価値が24億ドル(約3430億円)で、全資産の約45%を占めていると推定している。
トランプは、他にも暗号資産関連の事業を行っている。2022年にこの分野に参入した彼は、自身をスーパーヒーローや宇宙飛行士などに模したNFTのトレーディングカードを発売して、即座に完売させて700万ドル(約10億円)以上を得ていた。
次に登場したのが、トランプとその息子たちが不動産業者のスティーブ・ウィトコフ一家と共同で立ち上げたプロジェクトの「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)」だ(ウィトコフは現在、大統領直属の特命大使を務めている)。このプロジェクトは、これまで5億5000万ドル(約787億円)相当のWLFトークンを販売し、推定3億9000万ドル(約558億円)がトランプの懐に入り、税引後でも2億5000万ドル(約358億円)が残ったと見られている。このプロジェクトは、ステーブルコイン事業も展開しており、追加で約6000万ドル(約85億8000万円)がトランプの資産に加わったとフォーブスは推計している。



