自身のミームコインも発行
さらに、トランプは大統領の就任直前に立ち上げたミームコインの「$TRUMP」からも利益を得ている。このコインは、彼に税引後で約2億ドル(約286億円)の手数料収入や米ドル連動の暗号資産からの収益をもたらしたと推定できる。また、トランプは自身で推定4億3000万ドル(約615億円)相当の$TRUMPを保有している。これらすべてを合算すると、彼の暗号資産のベンチャーは保有資産の約60%を占めている。
このような状況から、トランプが暗号資産業界に多くの便宜を図ってきたのは不思議ではない。彼は、この分野に多額の投資を行うベンチャーキャピタリストのデービッド・サックスを暗号資産分野の特命担当に任命したほか、暗号資産の推進派として知られるポール・アトキンスを米証券取引委員会(SEC)の委員長に任命した。SECはその後、暗号資産企業に対する6件以上の訴訟を取り下げた。トランプはまた、1月にデジタル資産の普及を支援するよう政権に命じる大統領令を発し、3月には国家のビットコイン準備金の設立を命じる大統領令に署名した。
低迷する不動産事業
一方、トランプの不動産ビジネスは最近、成長の兆しをほとんど見せていない。ウォール街のオフィスタワーは含み損を抱えていると見られ、サンフランシスコの3棟からなるビル群も債務問題を抱えている。また、トランプが約5億ドル(約715億円)相当の物件を保有するパームビーチの不動産市場も、3年前から横ばいのままだ。
現在、父の事業を運営しているエリック・トランプは、この変化を今春ドバイで開かれた暗号資産のカンンファレンス「Token 2049」の場で示唆していた。彼は、不動産と暗号資産という2つの資産クラスが、「互いにとって最良の補完関係になった」と語っていた。
「不動産は流動性が低く、動かすのが難しい。限られた人のみが大規模にアクセス可能で、場所も固定されている。一方、暗号資産は流動性が高く、誰でもアクセスできる。だからこそ、暗号資産は不動産などのハードアセットに対する世界最高のヘッジと言える」とエリック・トランプは述べていた。
この見方は、少なくともドナルド・トランプにとっても正しいはずだ。


