カルチャー

2025.06.20 14:15

スターの誕生日に3740万円! レベチ度高い香港の推し活、熱狂の舞台裏

著者提供

「誕生日を祝う資金」集めのクラウドファンディングも常識

日本や韓国で発展したと言われる推し活文化だが、ここ香港では、それが一歩先を行った独自の進化を遂げているように見える。2018年に結成された12人組のミラーは、香港で初めて本格的に成功した男性アイドルグループだ。歌手活動だけでなく、ドラマやCM出演と幅広く活躍するミラー。街を歩けば、公共機関や店舗の広告でメンバーの顔を見ない日はない。

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ミラーの推し活の特徴は、なんといっても「ファン主導の大規模な草の根マーケティング」にある。メンバーの誕生日には、ファンが資金を出し合い、路面電車以外に、フェリーやバスを貸し切っての無料乗車キャンペーンが実施されてきた。沿道には数千人のファンが集まり、誕生日を祝う大合唱。自作のうちわやブロマイドなど、ファンの手作りグッズもあちこちで無料で配られる。

街の巨大スクリーンに広告を出す資金集めのためのクラウドファンディングも盛んだ。こういった広告はファンたちの記念撮影スポットとなり、SNSでの拡散も加速。ミラーは12人のメンバーを擁する。つまり、毎月のように誰かの誕生日イベントが街で繰り広げられているようなものだ。香港の推し活は単なる趣味を超えた社会現象と言える。

日本でもよく見る「駅広告」や「大型の広告看板」は、香港でも定番だ。しかし香港では、公共の場を使って自分たちの思いを伝えようとする姿勢がより強く感じられる。2019年の民主化デモ以降、表現や行動の自由が制限される中で、息苦しさを抱える香港の人たちの「自分の声を届けたい」という願いが背景にあるのかもしれない。

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その影響か、ミラーのファン層は、10代から70代以上までと幅広く、家族ぐるみでイベントに参加する姿も見られる。年配のファンにとっては、1997年以前の広東語ポップス全盛期を思い起こさせる存在であり、若い世代には政治的混乱の中で香港の誇りを象徴するミラー。

「ミラーを応援することで、自分も生きる力をもらっている」という声は、ファンの間でよく聞かれる。

姜さんのファンで誕生日イベントには毎年欠かさず参加しているという50代の女性は、姜さんが出演する映画を劇場で90回以上は見てきたという。推し活を始めて「内向的な性格が変わり、人生に意味を見出せるようになった」と興奮して話す。ファン仲間と一緒にコンサートや誕生日イベントに参加するだけでなく、ファンクラブ主催のチャリティーやボランティア活動にも積極的に参加するようになり、仲間との時間や社会貢献に生きがいを感じるようになったと語る。

ミラーは、日本や台湾、マレーシアなど海外の一部市場にも限定的に進出してきたが、中国本土での芸能活動は行っていない。香港という地元の市場を重視し、大陸に依存せず成立するビジネスモデルを展開している。

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文=堀江知子 編集=石井節子

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