現在、広く人々に役立っているもののなかには、偶然から生まれた産物が多く存在する。例えば、電子レンジは軍用のレーダー装置の実験中に偶然生まれ、ペニシリンはブドウ球菌を培養中にたまたまアオカビができたことで発見された。
「人間は、自分が狙った通りのものを完璧にはつくれません。偶然から発展して世の中を変えるインパクトをもたらしたというケースは意外と多くあります」
友人やパートナーとの出会い、現在の仕事に就いたきっかけなど、身近なことを考えてみても、偶然の積み重ねが今を形作っていることに気づかされる。世の中が偶然から生まれた人生の集合体であると考えるならば、積極的に偶然を取りに行く重要性に気づく。
「もちろん都合の良い偶然ばかりではありませんが、楽しめることであれば何をしても良いと思います。旅をしていて、チェックしていた美味しいお店を見つけることができなくても、街を散策できたし、散歩にもなって、それはそれでいい体験。そういうところに人生を豊かにしてくれるヒントが潜んでいるのではないでしょうか」。
我々は効率性を追求するあまり、多くの「無駄」や「偶然」を切り捨ててきた。しかし森下は、その「無駄」や「偶然」の中にこそ、人生を豊かにし、新たな価値を創造する種が潜んでいると説く。
「AIが効率化を加速させる現代において、人間が個性を持ち、ユニークな価値を創造するためには、不便や偶然を愛し、あえて回り道をすることの重要性が、これまで以上に増しています」
森下が提唱する戦略的暇と「スペパ」は、常に右肩上がりの直線上にいる我々に、ホッと一息つける踊り場を提供し、次の豊かな成長へのエネルギーをチャージしてくれるだろう。

森下彰大◎一般社団法人日本デジタルデトックス協会理事、講談社「クーリエ・ジャポン」編集者。1992年、岐阜県養老町生まれ。中京大学在学中にアメリカの大学に1年間留学し、マーケティングと心理学を専攻。2020年より日本初となるデジタルデトックスを専門的に学び実践する「デジタルデトックス・アドバイザー 養成講座」を開講。


