手間と時間で売り上げUP
オランダのスーパーマーケットチェーン「ジャンボ」には、「おしゃべり専用レジ」がある。これは雑談しながら会計したい人のための専用レジで、店員と客がゆっくりおしゃべりしながら会計をする。
近年増加しているセルフレジとは真逆のアプローチであり、一見すると非効率に見えるこのサービスはたちまち話題となり、顧客満足度や従業員のエンゲージメントも高まった。
ユニークなのは、高齢者や一人暮らし世帯の需要が予想されていたにも関わらず、若い世代の利用が多かったことだ。「目的のないちょっとした世間話を、実は若い人が求めていたということは、デジタル空間でそれを見つけるのが難しかったということなので興味深い」。
この事例は、効率性とは真逆の「手間」や「時間」を提供することで、顧客の潜在的なニーズに応え、サービスのユニークさを際立たせ、結果的に顧客満足度と売り上げ向上に繋がっていることを示している。
リアルが「事業創出」を促す
スペパは、事業の創出やサービスデザインのヒントにもなる。例えば、オランダのチョコレート会社「トニーズ・チョコロンリー」。もともとテレビ番組のプロデューサーだったトゥーン・フォン・デ・ケウケンが、カカオ栽培における奴隷労働の実態を取材で目の当たりにし、「奴隷労働のないチョコレートを作ろう」と始めたブランドだ。
「スマホで見るのと、実際にリアルで見るのとでは感じ方がぜんぜん違います。このようなインスピレーションや衝撃との出会いはネット上では難しい。自分で動いて実際に見るからこそ得られるものではないか」と森下。
「偶然」が新たな価値を創造する
本を執筆するなかで、自身にも良質な暇が必要と考えた森下は、学生の頃に行っていた路上音楽ライブのコミュニティを頻繁に訪れるようになった。
「路上は究極のランダム空間です。通りすがりの人との会話が生まれたり、仲間が演奏する曲に刺激を受けたり、ふとした雑談や相談ごとに考えさせられたり。大好きな音楽に触れることは仕事の息抜きになりますし、何より、一人の人間として自分を受け入れてくれる仲間たちがいるという安心感を覚えます。
路上ライブのコミュニティはちょっと特殊な例かもしれませんが、仕事を離れて、リラックスしながらも刺激を受けられる空間があなたにも必ずあるはずです。ぜひ探してみてください」


