ある金融サービス企業が、顧客情報や売上データの管理業務を行うリモートワーカーを採用した当初、すべてが順調に見えていた。面接に現れた男性は、仕事をそつなくこなせる印象で、身元調査でも不審な点はなかったという。
ところが、就業から2週間が経過すると、その従業員が極めて機密性の高い企業データを個人のクラウドアカウントに送信していることが、「MIND」と呼ばれる人工知能(AI)ツールによって発見された。実際にオフィスに出社していた人物は、面接を受けた人物とはまったくの別人の、プロの詐欺師から「職を買った男」だったのだ。
人間よりも的確に監視・検知して、情報漏洩を未然に防止
昨今では、前述の手口で身元を偽装した北朝鮮のエンジニアが西側企業に潜り込んだり、従業員がAIチャットボットに機密情報を漏洩したりなど、企業のデータをめぐる新たなリスクが多発しており、こうしたリスクを監視・検知する新たなセキュリティ技術が求められている。シアトルに拠点を置くMINDを2023年に共同創業したエラン・バラクは、同社のAIツールが「オートパイロット」機能を用いて機密データを識別してセキュリティを高め、高額な損害につながる情報漏洩を防ぐと説明する。さらに、「誤検知をほぼゼロに抑えている」と主張している。
MINDは6月4日、シリーズAラウンドで3000万ドル(約43億円。1ドル=144円換算)を調達し、評価額が1億100万ドル(約145億円)に達したと発表した。Paladin Capital GroupとCrosspoint Capital Partnersが主導したこの調達は、同社が昨年9月にステルスモードを脱出した直後に実施した1100万ドル(約16億円)のラウンドに続くものだ。
バラクによれば、MINDのAIツールは、顧客のクレジットカード情報を含むデータベースファイル、社内向けの議事録など、企業が所有するあらゆる種類のデータのリスクを人間よりも的確に判別し、それがどのようなセキュリティ層で保護されているのかを提示可能だという。これにより、機密データが露出したままになっている「弱点」を除去できる。またMINDのAIエージェントは、各従業員のデバイス上で稼働し、ブラウザーや他のアプリ経由で発生する情報漏洩を検出し遮断する。
「私たちは、複雑かつ機密性の高いデータをリアルタイムにデバイス上で分類できるようにするために、小規模な言語モデルをデバイスに直接搭載することを目指している」とバラクはフォーブスに語った。



