私は今57歳なので、継いだのが37歳というのは、ちょっと待たせすぎという感じでした。毎年いつバトンタッチするかという気持ちは、お互いにあったと思います。
そんな中、2004年にソーシャルプリンティングカンパニーを商標登録することになり、これは6代目の方針を掲げるのにもってこいの内容だと思いました。これからは印刷を通じて社会課題解決を実践する社会的印刷会社、ソーシャルプリンティングカンパニーだと。
無事に商標登録が取れたので、2005年から新しい方針を打ち出して社長に就任したという流れです。
━━社内改善によって、業績は上がったのでしょうか?
我々のお客さんは、印刷する方だけではなく、仕入れ先などの取引先もいます。そういうものも含めて見直した結果、少しずつお客さんが増えてきたり、戻ってきたりというのはありました。
取引先については、価格で見ていた時代がありました。なぜなら、こちらも1円でも高いと取引してもらえないのです。そのため材料代は、他社のほうが安かったら、そっちに切り替えました。
そのとき、忘れられない話があります。弊社は、いろいろな賞をいただき、ロータリークラブなどで講演する機会が増えました。ある講演でそこで私が何年も前に取引をやめた会社の社長が聞きに来ていたことがあったのです。
昔、1円でも安くということで、その取引先を変更していた経緯がありました。「1円」にこだわって取引をやめたことを棚に上げ、会社の成功事例みたいなことを話している。これは正しいことではないと思い、講演後にその社長に謝りにいきました。これが功を奏して、翌月から取引を再開しました。
「ダーウィンの進化論は嘘」
━━事業承継について、どのように考えていますか。
後継者として経営の勉強会に行くと、必ず出くわすのがダーウィンの進化論で、強いものが生き残るとは限らない、変化に対応するものが生き残るという考え方です。あれは嘘だと思います。
以前は私も真に受けて、「事業を継ぐためには、変化に対応していかねば」と思ってやっていました。そうしたら、一つの変化に対応している間に違う変化が起きて、気がついたら今までの努力は何だったのか、みたいな現象が起きるのです。
これに関しては私の尊敬する経営者の、椎野正兵衛商店の代表・椎野秀聰さんという方が、「競争できるまで絞り込め」「意思は引き継ぐな。理念を引き継げ」という話をしていたのです。
さっきのダーウィンの話と絡めると、「変化対応型企業」じゃなくて、「変化創造型企業」を目指すべきだと、私は考えました。
変化に対応しようと思っている間に違う変化が起きて、結局できないというより、椎野さんが言ったように、競争できるまで絞り込んで、小さい中でもいいから変化を創造した方が勝ちだと思ったのです。要するに、変化に対応する受身ではなく、変化をこちらからつくることが事業の承継に繋がると思っています。
あと、他の方から御社は「創造的自己否定を繰り返す会社ですね」と言われたこともありました。これはどういうことかというと、クリエイティブのために自社の否定をしながら、次の何かを生み出すということになると思います。これはまさに事業承継なのではと思いました。


