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2025.06.12 12:30

中国のアクションカメラ「Insta360」が上場、33歳の創業者がビリオネアに

Cineberg / Shutterstock.com

売上の76%は米国、欧州、日本といった海外市場から

Insta360の急成長を支えているのは、中国国内での好調な販売と、米国や欧州、日本といった主要市場への国際展開だ。目論見書によれば、同社の昨年の売上高の76%は海外市場からで、そのうち13億元(約260億円)は米国市場によるものだった。Insta360は現在、世界中に2000人の従業員を擁し、中国、米国、日本、ドイツにオフィスを構えている。

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同社の投資家には、小米(シャオミ)や美団(メイトゥアン)への初期投資で知られる啓明創投(チーミン・ベンチャー・パートナーズ)、IDGキャピタル・パートナーズ、米ナスダック上場のテック大手の迅雷(シュンレイ)、大手小売グループ蘇寧控股集団(スニン・ホールディングスグループ)などが含まれている。

中国国営メディアから、新興テック分野の「小巨人」とも呼ばれるInsta360は、2019年の調達ラウンドで3000万ドル(約43億円)を調達した。このラウンドの投資家は、Everest Venture CapitalやMG Holdings、Huajin Capitalなど中国本拠のベンチャーキャピタルだった。

ただ今後の見通しとしては、米中の貿易対立による逆風に直面する可能性がある。Insta360は、目論見書の中で、トランプ政権による関税政策の変化を理由に「海外事業の不確実性が高まっている」と述べている。

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同社はまた、家電分野の競争にも直面している。Insta360は、ナスダック上場のGoPro、アクションカメラも手がけるドローン大手DJIを競合に位置づけている。GoProは、Insta360の製品が自社の特許を侵害したと主張する訴訟を起こし、米国国際貿易委員会(ITC)が昨年から調査を進めているが、その結果はまだ公表されていない。

アップルのApple Vision Proとも連携

Insta360が注力する他のイノベーションとしては、他社のVR(仮想現実)デバイスとの互換性向上、人工知能(AI)を用いた編集機能の強化などが挙げられる。またアップルは、今週初めにApple Vision Proのパートナーに同社を指名。Insta360のフラッグシップ製品で撮影された広角視野のコンテンツが、Apple Vision Proで体験可能になることを明らかにした。Insta360は4月に自社のアプリ向けAIを用いた編集ツール群も発表しており、撮影された映像に自動で音楽やトランジションを追加できるとされている。

Insta360のカメラの需要は、より洗練度の高い機材を求める新世代のコンテンツクリエイターらに後押しされている。調査会社デロイトのレポートによれば、2023年時点の世界のコンテンツクリエイター人口は約5000万人で、SNSのユーザー数は50億人に達していた。同社は、拡大を続ける世界の「クリエイターエコノミー」が、ソーシャルコマースの市場規模を2026年までに2兆ドル(約288兆円)に押し上げると予測している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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