読者のほとんどはご存じかと思うが、筆者はかねて金(ゴールド)需要を牽引する強力な要因が2つあると強調してきた。そう、「フィアトレード(恐怖取引)」と「ラブトレード(愛着取引)」である。
フィアトレードのほうは、西側の多くの投資家に馴染みがあるだろう。不確実性が高まった時期に資金を安全資産に移す投資行動で、インフレや金利、地政学的リスクなどへの懸念によって引き起こされる。実際、金は歴史的に、危機やリセッション(景気後退)の際にセーフヘイブン(安全な逃避先)として求められてきた。
一方、ラブトレードは、文化的愛着や宗教的伝統、世帯所得の向上に基づいた購買行動で、とくに金の2大消費国であるインドと中国で活発に行われている。具体的に言えば、お祝いごとやステータスシンボルのために実物の金製品を買うことを指し、世界の金需要のおよそ6割はこの取引が占めている。
これらを踏まえたうえで注目したいのが、わたしたち(USグローバル・インベスターズ)が最近ポジションを取った中国の金宝飾品の新興企業、老鋪黄金(老舗黄金、ラオプー・ゴールド)だ。わたしたちは同社こそ、中国で金のラブトレードのまさに中心に位置する企業だと考えている。
1年で株価2300%急騰
北京に本社を置き、香港で上場している老鋪黄金は、2009年に創業された中国の国産ラグジュアリーブランドで、中国の伝統的な金細工をブランドの核に据えている。社名にある「老鋪」は文字どおりには「古い店」(編集注:「歴史や伝統がある店」といったニュアンスで、日本語の「老舗(しにせ)」と重なる面もある)を意味し、文化的な誇りやノスタルジー(郷愁)に重きを置く同社の姿勢を表している。
老鋪黄金は純金製品を固定価格、高い利幅で販売するというビジネスモデルで、一般的なジュエリー販売業者と一線を画す高級感のある精巧なデザインを売りにしている。一部から「金のエルメス」と呼ばれるゆえんだ。
その驚くべき数字がすべてを物語っている。