2025.06.12 13:00

カナダ人の訪米、5月は40%近い急減 米インバウンド市場への打撃甚大

米ワシントン州ブレインとカナダ・ブリティッシュコロンビア州サレーを隔てる国境にまたがってそびえる記念碑ピース・アーチ(Shutterstock.com)

米ワシントン州ブレインとカナダ・ブリティッシュコロンビア州サレーを隔てる国境にまたがってそびえる記念碑ピース・アーチ(Shutterstock.com)

カナダ人が米国旅行をボイコットする動きが5月に入って加速したことが、カナダ統計局の最新データから明らかになった。世界中で訪米を再考する旅行者が相次ぐ中、米観光業界にとっては大きな経済損失となる。

カナダから米国への旅行手段は自動車が過半数を占めるが、カナダ統計局によると、2025年5月に米国へドライブ旅行をしたカナダ人の数は前年同月比38%減となった。これは5カ月連続の減少で、減少幅はかつてなく大きい。

空の旅でも、カナダ発着で米国を訪れた旅客数は前年同月比で24%減少した。米国への自動車旅行者数と航空旅行者数は、3月と4月にも前年同月比2桁の減少を記録している。

米国旅行協会(USTA)は2月、カナダからの観光客が10%減少しただけでも失われる消費支出は21億ドル(約3040億円)に上り、ホスピタリティ産業と関連産業で14万人の雇用がおびやかされると警告した。今回のデータは、この予測の3~4倍の損失が発生するおそれがあることを示唆している。

カナダ統計局のデータはまた、5月にカナダへ旅行した米国人も減少したことを示している。自動車旅行は8%減、航空旅行は0.3%減だった。

カナダ人のボイコット、米観光業界への影響度は

米商務省の旅行・観光局(NTTO)によれば、カナダ人観光客は近年、米国を訪れる外国人旅行者の約4分の1を占めている。2024年に米国で休暇を過ごしたカナダ人観光客の消費額は205億ドル(約2兆9700億円)に上った。これは、米国人が2024年にマクドナルドで支払った金額(総額104億ドル=約1兆5000億円)のほぼ2倍に相当する。

ボイコットの背景には、カナダ政府が米国旅行について警告を発したことがある。ドナルド・トランプ米大統領が関税をめぐって主張を展開し、カナダを「51番目の州」呼ばわりし始めた2月上旬のことだ。当時のジャスティン・トルドー首相は休暇を米国で過ごさないよう国民に呼びかけ、4月に退任するまでこの呼びかけを繰り返した。

カナダの市場調査会社レガー・マーケティングが5月中旬にカナダの成人1500人余りを対象に行った世論調査では、米国旅行を検討していたカナダ人の75%が関税の発表により旅行計画に影響が出たと回答し、すでに米国旅行を予定していた人の56%が旅行先を他の国へ変更したと答えている。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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