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2025.06.12 11:30

EV所有者でも信じ込む「電気自動車をめぐるデマ」が広がる理由

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世界中のほとんどの人々が電気自動車(EV)に関する誤情報を信じ込んでおり、実際よりも危険で環境に優しくないと考えている。

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学術誌ネイチャー・エネルギー(Nature Energy)で発表された、クイーンズランド大学主導の調査によると、オーストラリアや米国、ドイツ、オーストリアの人々は、たとえ自身がEVを所有していたとしても、EVに関する誤情報に同意する傾向が強かった。

「誤った認識がいかに社会に浸透しているかを示している」

この調査で取り上げられた誤情報には、「EVはガソリン車より火災のリスクが高い」「排出ガスの削減効果がない」「健康に悪影響を及ぼす電磁波を出す」といったものが含まれていた。これらはすべて、明確に誤りであることが立証されている主張だ。

「このような虚偽の情報が流布していること自体は分かっていたが、これほど多くの人に受け入れられている現状は憂慮すべきことであり、サステナブルな交通手段への世界的な移行にあたって、大きな障害となっている」と、クイーンズランド大学ビジネススクールのクリス・ブレッター博士は述べている。

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「EV所有者でさえも誤情報に同意する傾向が強いという事実は、こうした誤った認識がいかに社会に浸透しているかを示している」。

研究者が「陰謀論的思考」と呼ぶ傾向が影響

意外なことに、教育の有無はEVに関する誤情報に騙されやすいかどうかに大きく影響しないという。むしろ影響を与えているのは、研究者が「陰謀論的思考」と呼ぶ傾向だ。

「誤った言説を受け入れる傾向を最も引き起こすのは、実は陰謀論的思考であり、陰謀が実際に起こっている(起こる)と信じ、世界を腐敗や秘密のたくらみというレンズを通して見る姿勢だ」と、研究チームのマシュー・ホーンジー教授は述べている。「このような世界観は、ワクチン接種や風力発電といった科学的根拠に基づくテクノロジーへの反発とも関連している」。

回答者の多くは、EVの利点が秘められたたくらみによって誇張されていると考えていた。また政策決定が倫理的でなく、金儲けを目的としていると信じる人もいた。EVが健康や環境に及ぼす悪影響についても、根拠がない、もしくは誇張された懸念を抱いている人がいた。

「この結果は、誤った都市伝説や根拠のない俗説、事実の一部を切り取った情報操作、憶測による理屈に形作られた情報環境によって、EVに関する人々の認識が歪められていることを示している」とホーンジー教授は指摘した。

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編集=上田裕資

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