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2025.06.25 11:00

今、経営者に求められる「新しいソートリーダーシップ」。 “地経学”の視点からサイバーセキュリティを紐解く

地政学に経済の視点を取り入れた「地経学」。地経学的な観点から政策提言を行うシンクタンク、地経学研究所の塩野誠とキンドリルジャパンCTO・河合琢磨、専務執行役員・松本紗代子が、地経学とサイバーセキュリティに関する最新のインサイトを語り合った。


松本紗代子(以下、松本):キンドリルはミッションクリティカルなエンタープライズ・テクノロジー・サービスのリーディングプロバイダーとして、「The Heart of Progress(社会成長の生命線)」を掲げ、お客様の事業をお支えしています。

2024年末には、社外の有識者によるテクノロジーとビジネスの接点に関するソートリーダーシップの提供を目指し、「The Kyndryl Institute」を立ち上げました。

世界情勢を理解し、ソートリーダーシップをもってビジネスをけん引することは、非常に重要です。最近では、特に日米関係が企業に与える影響についてお客様からご質問いただく機会が増えています。

まつもと・さよこ◎日本アイ・ ビー・エムに入社し、グロー バルな事業を統括する複数の ポジションを経て、IBMにおけ る日本人女性初のマネージン グ・ダイレクターに就 任。 2021年のキンドリルジャパン 発足時にリーダーシップチー ムの一員として参画し、ストラ テジックアライアンス事業部長 などを経て25年3月より現職。
まつもと・さよこ◎日本アイ・ ビー・エムに入社し、グローバルな事業を統括する複数のポジションを経て、IBMにおける日本人女性初のマネージング・ダイレクターに就任。 2021年のキンドリルジャパン発足時にリーダーシップチームの一員として参画し、ストラテジックアライアンス事業部長などを経て25年3月より現職。

塩野誠(以下、塩野):今、経営者が最も注視しているのは、米国の政策、特にトランプ大統領が打ち出す関税の問題でしょう。予見不可能な政策変更は、経営にとって最大のリスクです。

第2期トランプ政権の動きは、経済合理性だけでは説明がつきません。「貿易赤字は悪」「工場を米国に戻す」といった主張の背景には、1980年代に「高関税によ
って日本の自動車メーカーがアメリカに工場を建てた」というナラティブに基づいた成功体験と思想があります。しかし現代において、自動化が進む工場の移転を実現したところで、雇用創出効果は疑わしい。

現在の流れは、もはやイデオロギーの問題であるため、長期的に続くかもしれない。今や取締役会では、こうした国際情勢や思想的背景に関する議論が当然のようになされています。経営者、事業責任者は「このリスクを考えていなかった」とは言えず、教養が求められる時代となっています。

しおの・まこと◎地経学 研究所 経営主幹。シティバン ク、ゴールドマン・サックス証券、 ベイン・アンド・カンパニー、 ライブドア証券取締役副社長 など、国内外の金融機関や事 業会社で豊富な経験を積んだ 後、経営共創基盤に参画。
しおの・まこと◎地経学 研究所 経営主幹。シティバンク、ゴールドマン・サックス証券、 ベイン・アンド・カンパニー、 ライブドア証券取締役副社長など、国内外の金融機関や事 業会社で豊富な経験を積んだ後、経営共創基盤に参画。

地経学的観点で日本は“ホットスポット”

松本:近年の世界情勢を考えるうえで、地理的条件を前提とした地経学の考えも重要視されています。The Kyndryl Instituteでも、地政学リスクを評価する経営者のためのロードマップを提供していますが、地経学的な観点から、日本が抱えるリスクや状況をどのようにとらえていますか?

塩野:ヨーロッパの研究者が日本を安全保障の“ホットスポット”と呼ぶように、地経学という観点で日本は非常に難しい位置にあります。ウクライナ侵攻を続けるロシアと国境を接し、北朝鮮がミサイルを発射し、米中経済戦争の当事者である中国と隣接している。幸い80年間ほど安全保障上の大きなリスクを意識せずにきた日本人も、この地理的条件は再認識すべきです。

加えて、日本は自然災害大国です。データセンターの立地ひとつをとっても、地盤の安定性や縦に長い国土での分散配置への配慮が必要です。多くの経営者がインフラレベルのリスクを考え始めています。

例えば北朝鮮の国家的なバックアップを受けたハッカー集団が日本の産業に攻撃を加えれば、甚大な混乱を招くでしょう。その可能性をもつ国がすぐ近くにあり、すべてがネットワークでつながっている現実を、経営陣は見据えておくべきです。

顕在化するサイバーセキュリティリスク

河合琢磨(以下、河合):近年、サイバーセキュリティのリスクは深刻化しています。グローバルサプライチェーンの拡大とシステムの相互接続は、利便性をもたらす一方で、攻撃対象領域を拡大させました。ひとつの歯車が狂うだけで、お客様の生産活動や経済活動全体が停止しかねない状況です。

ITシステムの複雑化や老朽化も大きな課題で、異なる時代の技術が混在し“スパゲティ化”してしまったシステムや、サポート終了後のOSなどを使い続けてランサムウェアの格好の標的となっています。

従来の“境界防御型セキュリティ”ではなく、ゼロトラストアーキテクチャを中核に据え、包括的に対策する必要があります。具体的には、AIなどを活用してあらゆるデータを収集・分析し、異常を早期に検知する「オブザーバビリティ」の向上や、インシデント発生後の復旧プロセスを自動化する「オートメーション」、脆弱性の温床となるレガシーシステムを計画的に刷新する「モダナイゼーション」などが求められています。

かわい・たくま◎日本アイ・ ビー・エムに入社し、メインフレームからクラウドまで、幅広い技術領域で企業のITインフラ戦略を支援。21年のキンドリルジャパン発足に伴い移籍し、 25年4月より現職。
かわい・たくま◎日本アイ・ ビー・エムに入社し、メインフレームからクラウドまで、幅広い技術領域で企業のITインフラ戦略を支援。21年のキンドリルジャパン発足に伴い移籍し、 25年4月より現職。

松本:攻撃を前提として、「いかに早く事業を復旧させるか」といったサイバーレジリエンスの考え方が重要ですね。また、サイバーセキュリティの教育・啓蒙も大きな役割を果たします。

河合:製造業のサイバーレジリエンスを例にとってみると、サプライチェーンを構成する子会社や取引先も含めたエコシステム全体でのセキュリティレベル向上が求められます。特に投資余力の乏しい中小企業へのサポートや、レジリエンシス基盤の共有などは有効な手段でしょう。また、組織と人材の意識変革も重要な戦略です。

塩野:サイバーセキュリティの重要性は認識されつつありますが、投資の優先順位は後回しにされがちです。特に景況感が悪化するとその傾向は強まります。しかし、レガシーシステムに潜む脆弱性は放置できません。脆弱な海外子会社を踏み台にした攻撃は後を絶ちませんが、セキュリティ教育が行きわたっていれば回避できた例は数多くあります。サイバーセキュリティは「お金があるうちに投資すべき」という意識を経営層がもち、信頼できるベンダーやセカンドオピニオンを活用することが重要です。

河合:サイバーセキュリティの第一歩は「Identify(特定)」、つまり自社のアセットを可視化し、リスクを把握することから始まります。これからは、インダストリー全体やグローバルな視点、さらには官民連携を含めエコシステム全体を俯瞰することで、何が起きても迅速に対応できるリスク管理体制を構築しなければなりません。

現代の経営者に求められる姿勢

塩野:あらためて現代の経営者は、IT・デジタルは事業活動の基盤となる「レイヤー」であり、そのうえで事業を展開しているという認識をもつべきです。生成AIといった新しい価値を生み出す攻めの姿勢と、ゼロトラストに基づく強固な守りを両立させる。そのためには、技術動向だけでなく、国際情勢や思想といった幅広い教養に基づいて、常にゲームのルールを理解し続けなければなりません。

自社内に専門家を置くことはもちろん、社外に信頼できる情報ソースやアドバイザーをもちながら、常に情報をアップデートして経営判断に生かしていく。経営者にとってそれがあるべき姿だと思います。

松本:現代の経営者には地経学的な視点とサイバーセキュリティへの深い知識、そしてそれらを統合した経営判断が求められると言えそうです。「社会成長の生命線」を目指すキンドリルが、「The Kyndryl Institute」で提供されるソートリーダーシップを通じて、より経営者にとって信頼できるパートナーになれればと思います。

キンドリルジャパンが立ち上げた、アイデアとインサイトを提供する機関、The Kyndryl Instituteに関する詳細はこちら

Promoted by キンドリルジャパン / Text by Michi Sugawara / Photographs by Shuji Goto / Edited by Akio Takashiro