近視は失明リスクを劇的に上げる
では、なぜ近視を予防しなければならないのか。
それは、近視によって失明につながる眼疾患になる確率が上がってしまうからです。強度の近視があると、将来的に網膜剥離や緑内障、白内障、近視性黄斑症といった、失明の原因となる疾患になるリスクがはね上がることが分かっています。
どのくらいリスクが高くなるのかを、具体的にお伝えしましょう。
強度の近視がある場合、網膜剥離のなりやすさは、そうでない人の22倍に上ります。緑内障は14倍、白内障は5倍、近視性黄斑症にいたっては約850倍にもなるのです。これは、近視によって網膜が伸びて薄くなることや、眼球内の代謝が悪くなることが原因です。
つまり、近視は予防しなければならない病気だということ。「見えづらいからメガネをかければよい」では済まされない危険な疾患なのです。ここ数十年で近視になる子どもたちが増加していることを考えると、今から数十年後には網膜剥離や緑内障になる人の数は爆発的に増えることが予想できます。
先述の調査結果を受けて、文部科学省では「子どもの目の健康を守るための啓発」に力を入れていくとしていますが、実際に教育現場での取り組みはまだ見られていません。こうした日本の動きは、世界で後れをとっています。
WHOの警鐘「2050年に世界人口の50%が近視になる」
世界的に見ても近視の有病率は上がっていて、海外では社会問題と認識されています。WHO(世界保健機構)は、2050年には近視になる人の数が、世界人口の50%にのぼると予測しています。その数、なんと47億5800万人。これは糖尿病や肥満よりも多い数です。
さらに強度近視の人口は9億3800万人とされ、10人に1人が失明のリスクを抱えるであろうといわれています。WHOの眼科部門の担当者は「近視は21世紀における公衆衛生上の重大な問題だ」と警鐘を鳴らしています。
これらの発表を受けて、昨年9月には科学界の最高権威である米国科学技術医学アカデミーから、近視に関わる報告書が発表されました。その内容は、「近視を病気」として正式に分類することを推奨し、医療診断の必要性を強調するものでした。近視を病気と位置付け、国家的に対策を打っていかなければならないことが示されたのです。


