ヘルスケア

2025.06.17 14:15

近視は病気だった? 日本の経済損失は試算年4兆円、予防しないとどうなる

眼科医で窪田製薬ホールディングス代表取締役会長窪田良氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)

眼科医で窪田製薬ホールディングス代表取締役会長窪田良氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)

昨今、「近視」の有病率が世界的に上がっていることをご存じだろうか。

WHOは「2050年に世界人口の50%が近視になる」と警鐘を鳴らしており、世界では近視は「社会問題」として認識され始めているという。だが、日本ではまだ、「近視になったらコンタクト(メガネ)を使えばよい」といった認識がふつうなのが現状だ。

そのここ日本に、「近視をゼロにし世界中から失明を無くす」を目標に活動する医師がいる。眼科医で『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)の著書もある窪田製薬ホールディングス代表取締役会長・社長兼最高経営責任者 (CEO) の窪田良氏だ。

では、近視はどれくらい恐ろしいのか、近視対策を取らない場合、どうなるのか。以下窪田氏にご寄稿いただいた。


裸眼視力1.0に満たない子どもが過去最多に

ここ数十年、近視になる人が急増していることはご存知でしょうか。そういえば、昔に比べてメガネやコンタクトをしている人が増えているような……、と感じたことがある人もいるかもしれません。では、実際にどのくらい増えているのか。

近視の有病率は、特に若い世代で非常に高く、2024年度に実施した文部科学省の調査によると、裸眼視力が1.0未満の人の割合は、小学校で3割を超え、中学校で6割程度、高等学校では7割程度だと明らかになりました。裸眼視力が1.0に満たない小中学生は、過去最高の数字のまま横ばいの状態です。

こうした統計が取られるようになったのは1979年からですが、その40年ほどの間に、近視の有病率は著しく上がっています。よく「近視は遺伝によるものだ」という考えはよく聞かれるものの、わずか数十年という短いスパンで遺伝子が変異しているとは考えにくく、近視が環境的な要因によって引き起こされていることは明らかではないでしょうか。

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近視は予防しなければならない“病気”

これだけ近視の人が増加しているにもかかわらず、日本ではあまり重く受け止められていません。近視の問題は、ほとんどといっていいほど知られていないのが現状です。なぜなのでしょうか。

それは近視が病気ではなく、単に「見えづらい現象」であるかのように軽く扱われ、十分な対策が取られてこなかったからです。例えば、先ほどの文部科学省のデータでは、虫歯になる人の割合は過去最低になりました。それは、虫歯の危険性が知られるようになり広まり、幼少期からしっかり予防されるようになったからです。

虫歯同様に近視も予防しなければならないものなのですが、日本ではまだまだ近視の危険性は浸透していません。長年、近視は「屈折異常」とされ、保険診療の対象外でした。そのため、多くの人が「近視は遺伝だから仕方がない」「視力が低下してもメガネをかければよい」と考えてしまっているのです。

私は眼科医として、この状況に強い危機感を覚えています。

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編集協力=安藤 梢

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