宇宙

2025.06.15 15:00

トランプとマスクの対立激化がボーイングに朗報となる可能性

Around the World Photos / Shutterstock.com

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ボーイングは新CEOであるケリー・オルトバーグの下で、民間航空機事業の立て直しに向け着実な進歩を遂げている。ドナルド・トランプ大統領と元盟友イーロン・マスクとの関係の劇的な破綻は、同社の苦戦する宇宙事業部門に追い風をもたらす可能性がある。

米国時間6月5日にソーシャルメディア上で行われた両者からの怒りの声明の応酬の中で、トランプ大統領はマスクの企業との連邦契約を取り消すと脅迫した。これに対して世界一の富豪であるマスクは、自身のロケット・衛星企業であるスペースXが「ただちにドラゴン宇宙船の運用停止を開始する」と主張して応じた。

マスクは後にこの脅迫を撤回したものの、この対立はボーイングにとって3つの分野で利益をもたらす可能性がある。苦戦する宇宙船「スターライナー」による有人カプセル計画、ボーイングが巨大ロケットを製造する困難に直面するアルテミス計画、そしてロッキード・マーティンとの合弁ロケット事業のユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)だ。

アメリカン・エンタープライズ研究所の宇宙・防衛アナリスト、トッド・ハリソンは「トランプ大統領が実際に契約を取り消す可能性は低い。訴訟の格好の材料となるためだ」と指摘する。しかし政権は、新規案件をボーイングなどに振り向ける余地も、マスクの火星到達構想への支援を縮小する余地も十分に有している。「トランプ大統領がスペースXに単独で大きな打撃を与えられるとすれば、NASA(米航空宇宙局)のミッション目標を変更することです」とハリソンは述べた。

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NASAは2014年、米国人宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に輸送する宇宙船を、官製ではなく民間委託で開発する方針を打ち出し、ボーイングならびにスペースXと契約を結んだ。しかしボーイングのスターライナーは度重なる不具合に見舞われ、NASAはスペースXのドラゴンに依存することとなった。同庁はこれまでにドラゴンの打ち上げを3回追加し、契約総数は9回に達している。

ボーイングは46億ドル(約6630億円)の固定価格契約で20億ドル(約2880億円)の損失を出している。

昨年行われた問題の多かった初のISSへの有人試験飛行の後、ボーイングのスターライナーの将来には疑問符がついていた。宇宙飛行士のスニータ・ウィリアムズとブッチ・ウィルモアをISSまで無事に輸送したものの、スラスターの不具合により、NASAは彼らがスターライナーで地球に帰還するのはリスクが高すぎると判断した。両飛行士は、帰還のための宇宙船「ドラゴン」が到着するまで、9カ月間も宇宙ステーションでの待機を余儀なくされた。

マスクによる宇宙船「ドラゴン」退役の脅迫は、政権の計画を変える可能性がある。

「NASAは代替手段を持つことが賢明だと感じるかもしれません」と、独立系衛星産業コンサルタントのティム・ファラーは述べた。

不確定要素もある。ロシアは2028年以降のISS支援を確約していない。もしロシアが撤退すれば、NASAは計画されている2030年末よりも早くステーションを軌道から離脱させざるを得なくなる可能性があり、そうなれば輸送サービスの必要性は減少する。

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翻訳=酒匂寛

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