月へ
2026年予算要求において、トランプ政権はトランプ大統領の最初の任期中に開始されたアルテミス計画(米国人を再び月に送りこむ計画)の抜本的見直しを提案した。政権は、同計画の中核となるボーイング製巨大ロケットであるスペース・ローンチ・システム(SLS)を、あと2回の打ち上げ後に段階的に廃止したいと考えている。SLSは同計画に絡む利益誘導のため「上院ローンチ・システム」というあだ名を付けられており、1回の打ち上げに40億ドル(約5770億円)という高額な費用がかかる。予算要求では、より安価な商業システムへの移行を提案しており、それらを提供する主要候補としてスペースXとブルーオリジンが期待されている。
しかし、全50州で雇用を支えるSLSの削減に議会が同意するかどうかは明確ではなかった。報じられるところによると、上院商務委員会はSLS向けNASA予算から削減された40億ドルを復活させることを検討しているが、トランプ政権は彼らと争う意向はないだろう。
「NASAがSLSを活用するアルテミス計画を継続する可能性が高まったようだ」とハリソンは述べた。
ボーイング以外のもう一つの潜在的勝者はブルーオリジンである。NASAは、ジェフ・ベゾスが所有するブルーオリジンとスペースXの両方に、アルテミス計画用の月面着陸船の製造を依頼している。着陸船輸送に必要なスペースXの巨大なスターシップ(Starship)ロケットが3回連続で飛行テストに失敗していることから、NASAはブルーオリジンに重点を置くことを十分検討する可能性がある。
国家安全保障
今回の対立は、国防総省などの安全保障機関に対し、スペースXに偏重した衛星打ち上げ体制の多様化を促す契機となり得る。ただし即効性は限定的だ。ボーイングとロッキード・マーチンの合弁会社ULAは、新型重量級ロケット「ヴァルカン」の打ち上げ回数を拡大する必要があるため、当面スペースXの全契約を肩代わりすることはできない。「ULAは、仮に契約がすべて手渡されても処理しきれないでしょう」とハリソンは説明する。
トランプとマスクの決裂は、防衛当局が、米国のミサイル防衛シールドを構築する政権の計画であるゴールデン・ドーム構想にスペースXをどの程度依存したいかを再考させる可能性もある。
「この状況によって、その資金をマスクに渡すべきか、それとも例えばボーイングのような、より伝統的な請負業者に渡すべきかを、みんな立ち止まって考えるかもしれません」とファラーは述べた。


