米ABCニュースは6月10日、トランプ大統領と政権の幹部を強く非難したベテラン記者のテリー・モランとの契約を打ち切ると発表した。同局は、モランが最近のX(旧ツイッター)の投稿でトランプとスティーブン・ミラー大統領次席補佐官を強く非難したことを、契約の更新中止の理由に挙げている。
ABCニュースは、現在は削除済みのモランの投稿が、同局のポリシーに「明確に違反していた」と10日の声明で述べている。モランは、この投稿でミラーが「憎しみの才能にあふれた男だ」と語り、「その憎しみが彼の精神的な糧となっている」と述べて、ホワイトハウスがABCニュースに説明責任を問う事態となっていた。ABCニュースは、これを受けて8日にモランを停職処分としていた。
「我々はすべての記者に対して最高水準の客観性や公平性、そしてプロフェッショナリズムを求めており、今後も偏りのない信頼されるジャーナリズムを提供し続けることにコミットしている」とABCニュースは10日の声明で述べた。
ニューヨーク・タイムズによれば、モランの契約は13日に満了する予定だったという。約30年にわたりABCニュースに務めたモランは、2001年9月11日の同時多発テロや中東での戦争、複数の大統領選の取材を行っていた。
モランは、トランプ政権の発足から100日間を振り返る4月の特集でトランプにインタビューした。その中でトランプは、ABCニュースを「最悪のメディアのひとつ」と表現しつつ、自身の関税政策や経済運営、移民の取り締まりの正当性を主張した。
モランはまた、エルサルバドルへ誤って強制送還されたキルマー・アブレゴ・ガルシアを米国に戻さないというトランプ政権の当初の決定についても質問した。ホワイトハウスは、ガルシアのタトゥーがMS-13(中米の凶悪ギャング)の構成員であることを示唆するものだったと主張したが、モランはそれに異議を唱えた。トランプはその場で「君はとても失礼だ」と述べて、ふたりは口論になっていた。
トランプは過去にもABCニュースと衝突
トランプは過去にもABCニュースと衝突している。昨年12月、自身の名誉を傷つけられたとして損害賠償を求めた裁判では、ABC側が1500万ドル(約21億7500万円。1ドル=145円換算)を支払うことで和解が成立した。この訴訟は、ABCの司会者ジョージ・ステファノプロスが番組中に、トランプが元雑誌コラムニストのジーン・キャロルを「強姦したことを裁判で認定された」と10回にわたって繰り返し発言したことを受けて提起されていた。
陪審は、トランプがキャロルに性的暴行を加えたことを認めていたが、強姦されたことは証明できないとする評決を下していた。キャロルはトランプを相手取った名誉毀損訴訟で8000万ドル(約116億円)超の賠償を得ていた。