米国の航空業界は、厳しい経営状況に直面
米国の航空業界は今年、厳しい状況に直面することになりそうだ。主要な航空大手は、年初時点で前年比での収益成長を見込んでいたが、トランプ大統領の追加関税の発表を受けて経済が不安定化した結果、デルタ航空やアメリカン航空、サウスウエスト航空、ジェットブルーは4月中旬までに2025年の通年の業績見通しを撤回した。また、ユナイテッド航空は、景気後退が起こった場合と起こらなかった場合のふたつの利益シナリオを提示した。
ダウジョーンズ米国航空指数は、年初来で13%下落している。同期間の各社の株価は、ユナイテッド航空とデルタ航空がそれぞれ11%と13%の下落、アメリカン航空とジェットブルーはそれぞれ30%と33%下落している。
米国人の海外旅行需要は堅調だが、ドル安が影響する可能性も
米国人の海外への旅行需要に関しては、航空大手は「現時点で問題は見られない」と述べている。アメリカン航空の最高財務責任者(CFO)デボン・メイは先月、「国際線のトレンドは引き続き堅調だ」と述べて、第2四半期は国際部門の収益がプラスになる見込みだとした。ユナイテッド航空の最高商務責任者アンドリュー・ノセラも4月に「カナダや欧州からのインバウンド需要は減少したが、米国発の需要がそれを補って余りある」と述べた。
ただし、ドル安の影響で、米国人の海外旅行への意欲がこの先衰える可能性もある。複数の主要通貨に対するドルの総合的な強さを示すDXY指数によれば、ドルは前年比で6%下落している。また、ユーロに対しては5%安、英ポンドに対しては6%安、日本円に対しては8%安となっており、米国人がこれらの国を訪れた際の支出は昨年より割高になる。
国際線の夏の便はすでに多くが予約済み、課題は秋以降
航空各社は、近年のプレミアム需要の強さを受けて、機内設備を刷新し、フルフラットシートなどプレミアム機能を強化してきた。4月の第1四半期決算でも各社は「エコノミーの需要鈍化をプレミアムで補う」という姿勢を示していた。たとえばデルタ航空のグレン・ハウエンスタイン社長は「景気後退下では、プレミアム需要はエコノミー需要と比べ回復力が高い」と投資家に語っていた。
しかし、Consumer Edgeの新たなデータは、こうした見方に疑問を投げかけている。Raymond Jamesのサイスはフォーブスに対し、「夏の海外旅行の多くがすでに予約済みの今、気になるのは秋以降の状況だ。このデータは、高所得世帯の需要に軟化傾向が見られることを示す初めてのものだ」と語った。
ホテル業界も、消費者信頼感の低下による影響を受けている。ホスピタリティ業界調査のCoStarとTourism Economicsは先週、米国ホテル業界の2025年予測を下方修正した。客室1室あたりの収益を表す指標(RevPAR)の成長率見通しを1.8%から1%に引き下げている。これは、観光とビジネス旅行の両方について、需要減少やリスクの高まりを受けてのものだ。


