ヒンクルは「ENTは、大質量星の一生の劇的な最期を告げるだけではない」として「宇宙最大規模のブラックホールの成長に関与するプロセスに光を当てるものでもある」と述べている。
ENTはどのようにして見つかったか
今回の研究には、これまでに記録された最も高エネルギーの現象である「Gaia18cdj」と命名されたENTに関するデータが盛り込まれている。典型的な超新星は、太陽から100億年にわたって放射されるのと同程度のエネルギーを放出する。Gaia18cdjは、これまでに観測された最も高エネルギーの超新星の25倍ものエネルギーを放出した。
今回の発見は、欧州宇宙機関(ESA)のガイア(Gaia)天文観測衛星のデータの分析によってもたらされたものだ。ガイア衛星は2014年より太陽を周回しながら20億個の星を3兆回観測し、推進剤を使い果たしたために2025年に運用を終了した。ガイアは2016年と2018年に謎の閃光として2つのENTを記録していた。さらに2020年には、バービー(Barbie)のニックネームで呼ばれている3つ目のENTの「ZTF20abrbeie」が、米カリフォルニア州ツビッキー掃天観測所(ZTF)のデータを用いて発見されている。
その後、米ハワイ島にあるケック望遠鏡、NASAのガンマ線バースト観測衛星ニール・ゲーレルス・スウィフトや赤外線天文衛星WISEなどの他の望遠鏡の観測データを用いて追跡調査が実施された。
時間を遡る
ENTは極めて明るいため、途方もない距離を隔てても観測できる。これは天文学では、時間を遡って見ることを意味する。これにより、宇宙の年齢が現在の半分足らずだった「宇宙の正午」と呼ばれる時代の現象を調べることが可能になる。論文の共同執筆者で、IfAの准教授のベンジャミン・シャピーは、この「時代は、銀河がとても活動的な場所だった。星形成活動とブラックホールが星を飲み込む活動が、現在の銀河に比べて10倍活発だったのだ」と説明する。「ENTは、遠方の銀河にある巨大ブラックホールを調査するための貴重な新しい手段を提供する」
早ければ2026年に打ち上げられるNASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、宇宙年齢が現在のわずか10%だった120億年以上前からのENTを搭載の赤外線検出器で捉え、宇宙時間にわたってブラックホールが銀河をどのように形作ってきたかを天文学者が追跡する助けとなるに違いない。


