北米

2025.06.10 17:00

トランプ、米国籍の新生児に14.5万円配る「トランプ貯蓄口座」を発表

2025年6月9日、Trump savings accountsと呼ばれる制度の構想を発表したトランプ大統領。(Photo by Win McNamee/Getty Images)

2025年6月9日、Trump savings accountsと呼ばれる制度の構想を発表したトランプ大統領。(Photo by Win McNamee/Getty Images)

トランプ米大統領は6月9日、米国で生まれた新生児のために政府が投資口座を開設し、1000ドル(約14万5000円。1ドル=145円換算)の初期資金を拠出する「トランプ貯蓄口座(Trump savings accounts)」と呼ばれる制度の構想を発表した。この制度は、大統領が掲げる法案の「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル(大きく美しい法案)」に盛り込まれている。

2025年1月1日から2029年1月1日までに米国で生まれた新生児に自動割り当て

トランプは9日にホワイトハウスで開かれた会議でこの構想を正式に発表した。この会議には、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEO、デル・テクノロジーズのマイケル・デルCEO、ウーバー・テクノロジーズのダラ・コスロシャヒCEOらが参加した。トランプは、この構想が自身の2期目の政権における最も重要な施策のひとつになると語った。

トランプ貯蓄口座は、2025年1月1日から2029年1月1日までの間に米国で生まれた新生児に対して自動的に割り当てられるもので、財務省が1000ドル(約14万5000円)を拠出する。この資金は株式市場全体と連動する低コストのインデックスファンドで運用される。また、親や口座管理者は毎年最大5000ドル(約72万5000円)までの課税後の資金を追加で拠出できる。

口座の持ち主は、18歳になれば残高の最大50%を引き出すことが可能となる。25歳以降は、起業のための資金や高等教育といった「適格用途」に限って全額にアクセスが可能になり、30歳で残高全体を自由に使用できるようになる。この口座の資金を引き出す場合は、長期キャピタルゲイン税または通常の連邦所得税の支払いが求められる。

「MAGA口座」

このトランプ貯蓄口座は、以前は「成長と前進のためのマネーアカウント(Money Accounts for Growth and Advancement)」と名付けられ、略して「MAGA口座」と呼ばれていた。これは、トランプが掲げるスローガンのMAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)にちなむものだったが、下院での法案の通過の直前に共和党議員らが改名した。

この構想の実現に必要な政府の拠出額は、2023年の米国の出生数約360万人に基づいて試算すると総額36億ドル(約5200億円)に及ぶことになる。しかし、トランプはこの財源を、「ビッグ・ビューティフル・ビル」施策の一部から捻出するとしており、「納税者に一切のコストはかからない」と述べている。

トランプ貯蓄口座の実現は、上院が「ビッグ・ビューティフル・ビル」を可決するかどうかにかかっている。しかし、共和党のランド・ポール上院議員などの財政保守派の議員らはこの法案による国家債務の膨張に懸念を示しており、先行きは不透明となっている。

専門家は否定的

アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズのCEOは、「親や口座管理者にとって、トランプ貯蓄口座はあまり魅力的な投資先とは言えない」と述べて、「トランプ政権は、特に理由もなく制度を複雑にしているように思える」と付け加えた。金融業界の専門家たちは、トランプ貯蓄口座には政府拠出として1000ドル(約14万5000円)を受け取れる以上のメリットがなく、子どものために追加資金を預けるのに適した仕組みだとは考えていない模様だ。その背景には、トランプ貯蓄口座の税制上の優遇措置が、教育資金や老後資金に向いた既存制度と比べ見劣りすることが挙げられる。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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