音楽

2025.06.18 13:30

破壊的革新ではなく正直な革新 すべては「アーティストの自由」を尊重するために

遠山啓一|CANTEEN代表

遠山啓一|CANTEEN代表

日本の音楽シーンのなかで独自の経営スタイルを打ち出している音楽事務所・CANTEEN。彼らが大事にしてきた「アーティストの創作意欲に対して誠実に向き合うこと」の意味とは。


「我々は、アーティスト自身の持続的な成長を第一に考えている。国内の音楽シーンを見ても、自分たちの美学を保ちつつ大規模な活動を実現できている人は決して多くない。音楽を単に消費されるコンテンツととらえるのではなく、音楽で世界を変えたいと願う表現者たちに、失望してほしくない」

そう話すのは、CANTEEN代表の遠山啓一だ。遠山が2019年に創業したCANTEENは、アーティストのマネジメントや海外との取引を担うエージェント業務、さらにはイベント制作も支援する企業だ。25年2月に神奈川・ぴあアリーナMMでの公演を成功させたTohjiをはじめ、ralph、kZm、Elle Teresa、JUMADIBAなど今をときめく才能あるラップアーティストたちが多数所属し、感度の高いティーンから絶大な支持を集めている。

遠山は、旧態依然とした音楽業界に風穴を開けるフロントランナーとして異彩を放つ起業家だ。既存の音楽事務所やレーベルとは一線を画し、アーティストの自己表現とビジネスの両立を支援し、興行構造や契約慣習に変革をもたらすその独自の手腕が、業界内外から注目を集めている。同社の独自性は、常に「アーティスト・ドリブン」の視点からあらゆるマネジメントサービスを提供する点にある。

これまでのアーティストは、インディペンデントに活動を行っていても、ある程度まで規模が拡大するとマネジメントやイベント制作といった業務を自分たちでカバーできなくなり、メジャーレーベルとの契約を行うことが一般的だった。しかし、メジャーレーベルに所属することはそこに紐づく既存の事務所と三者間契約を結び、「J-POPというフィールドで売れる」レールの上を走ることを意味する。その道では必然的にアーティストが「やりたくないこと」と向き合う機会も多く、葛藤を抱える人も少なくない。こうした葛藤を避けるために、CANTEENは常にアーティストの意志を優先しながら、マネジメントからエージェント、イベント制作に至るまであらゆる業務を一手に引き受けている。

アーティストの創作意欲や表現欲求に対して、CANTEENは誠実かつ真摯に向き合うことを大切にしてきた。だからこそ、所属アーティストたちはリスナーの熱量を保持したまま、着実にスケールアップしていくことができている。「誰もが想定しうる活動でお茶の間まで広がるメジャー系」と「自己表現を貫くが活動に広がりのないインディペンデント系」に二極化している日本の音楽シーンにおいて、その中間を力強く切り拓いてきたのがCANTEENなのだ。遠山は冒頭の言葉について、以下のように続ける。

「だから、私たちはアーティストやクリエイターが正直でいられる環境をつくり続けたい。突き詰めて考えていくと、何かひとつの機能だけを切り出して支援するというかたちに違和感を覚えるようになった。表現したいことをかなえ、多くの人に届けていくためには、事務所もレーベルも海外進出のためのエージェントもイベント制作も、全部『普通に』必要なこと。結局、人としてアーティストに向き合うことが、最終的に持続可能で競争力のある活動につながる」

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文=つやちゃん 写真=ヤン・ブース

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