所属アーティストのライブイベントの熱量は、ユース層を惹きつける大きな魅力となっている。大手の事務所やイベンターの手がけるアーティストは、一定の規模から途端にライブがパッケージ化されていくが、CANTEENはキャパシティを広げてもなお、現場の熱気を失っていない。これも「正直でいられる環境づくり」を地道に実践している結果だろう。
「我々に個性があるように見えるかもしれないが、特別な企画やディレクション、演出をしているわけではなく、ただアーティストが正直でいられる環境を大切にしているだけ。その結果、自然と熱量が高まっていくというロジックを信じ続けたい」
独自スタイルから「2つの新展開」へ
今、彼はふたつの新たな展開に取り組んでいる。
ひとつは、経済産業省令和6年度補正予算「クリエイター・エンタメスタートアップ創出事業」を活用したアーティスト支援プログラム「New Music Accelerator」の企画・運営だ。遠山の問題意識は「今後、日本のコンテンツ産業が世界で一定のプレゼンスを獲得していくためには、小規模・中規模の事業者やクリエイターを支援する体制が必要」という点にある。「海外の人はよく、Tohjiのようなオルタナティブなサウンドやエステティック(美学)をもったアーティストがアリーナを埋める国ってすごい、と驚く。だからこそ、グローバルメジャーだけではないアーティストやそれを支援する人たちの連帯が欠かせない」。このプログラムの開始は、CANTEENがこれまでやってきたことを、国の事業レベルで展開できるフェーズに入ってきたとも言えるだろう。
もうひとつの取り組みは、アスリートのマネジメントだ。遠山曰く、音楽アーティストとアスリートは似ているという。どちらもライブや試合といった興行があり、原盤権や肖像権といった本人に紐づく権利が存在し、それを流通するメディアという存在がある。どちらも業界構造としては非常に寡占的だ。
「アスリートの多くは、もっと多様な活動を望んでいる。貴重なオフにCMやメディア出演をするだけではなく、本人の思いを起点とした活動をやりたいという声をよく聞く。それに応えたい」
音楽やスポーツ、ジャンルに関係なく、遠山は常に自由な表現に心を動かされてきた。そして何より、CANTEENに所属するアーティストやクリエイターたちの存在が、彼にインスピレーションを与え続けているという。その感性を武器に、CANTEENはこれからもリアルでユニークな価値を世界へ届けていくのだろう。
とおやま・けいいち◎CANTEEN代表。ロンドン大学SOAS修士課程修了後、広告代理店勤務の傍ら、都市文化や音楽に関するリサーチプロジェクトを展開。2019年CANTEEN設立。アーティストのマネジメントほか、アートやクリエイティブに関わる事業を複数展開。


