「よく見る」ための9つの教訓
──観察法を説く最良の手引書として、英国の男性バードウォッチャーが書いたハヤブサ観察記『The Peregrine』(未邦訳、1967年)を挙げていますね。同書から得られる9つの教訓を説明してください。
マスビアウ:著者のジョン・ベイカーは観察の達人だった。教訓1「本当にそこにあるものを見よ」。ありのままの状態を見ることが重要だ。教訓2「観察は執念で決まる」。優れた観察者は特定のトピックにこだわる。彼はハヤブサの世界を理解することに執着した。執念が質の高い観察と描写を生む。
教訓3は「良い観察内容には常に観察者も含まれている」。人は自らの人間性と経験を他者に投影させることで、他者を理解できる。
教訓4「観察は意見ではない」。
教訓5は「観察は体系的なウォッチングから始まる」。優れた観察者の多くは物静かで控えめだ。こだわりをもっているため、まずは体系的なウォッチングから始める。
教訓6は「場の雰囲気を見落とすな」。その場の雰囲気は、人が世界を理解するためのツールだ。教訓7「ハヤブサのように生きる」。観察者自身もハヤブサのように動くべきだ。自然の効率性は観察にも役立つ。
教訓8は「ハヤブサの目で知覚する」。他者の立場と視点で世界を理解するのが重要だ。教訓9「観察に当たっては、『性格の徳』を忘れない」。「性格の徳」とは、行動や習慣から生まれる徳だ。思いやりは、より良い観察や他者への理解につながる。
──どの教訓が最も好きですか。
マスビアウ:米国の現況を考えると、教訓4「観察は意見ではない」だ。昨今の米国には意見があふれ、人々がいがみ合っている。相互理解とは「聞く」ことだ。日本の人々には、お互いの声に耳を傾け、相手を観察するだけの時間と能力がある。素晴らしい。
──日本の起業家にメッセージを。
マスビアウ:シリコンバレーをまねるのではなく、日本ならではの起業家のあり方を見いだすことが重要だ。ぜひ、「日本版シリコンバレー」を目指してほしい。日本の起業家も独自のやり方で成功できる。
クリスチャン・マスビアウ◎ReDアソシエーツ共同創業者。人間科学の実用分野で広く執筆、講演、教育活動を行う。著書に、ベストセラーとなった『センスメイキング』『心眼 あなたは見ているようで見ていない』(ともにプレジデント社)。


