大元は「流れ星のかけら」
夜光雲の核となっているのは、宇宙から降ってくる微小な隕石(微隕石)や流星が崩壊した際に残した塵、つまり「流れ星のかけら」である。流星が空を横切るのを見たことのある人もいるだろう。それが起こっているのが中間圏だ。
流星は中間圏で大気と衝突し、プラズマ発光する。流星物質が蒸発するとナトリウム原子や鉄原子の塵が残り、零下120度以下の極低温環境でその周囲に氷が凝結して、とても小さな氷の粒ができる。夜光雲の正体は「地球上で最も冷たい雲」なのだ。水蒸気と微隕石の塵、それに非常に低い気温。この3つの条件がそろうと夜光雲が生じる。
見えているのは反射する波紋
中間圏のナトリウム原子と鉄原子は反射率が高い。たとえば巨大望遠鏡は、中間圏にレーザーを照射して大気の揺らぎを補正し、光学系を調整している。これは理論的には、夜光雲を形づくる氷の粒に沈着したナトリウム原子と鉄原子が金属膜を形成し、これがレーダーを反射して光を大きく散乱していることを意味する。
しかし、カリフォルニア工科大学の研究者によれば、私たちが夜光雲を見たときの輝きは、金属膜に覆われた氷の粒1つ1つがすべて光を反射しているからではなく、雲の中で波紋のように反射しあって輝きが強まっているのだという。
初観測は1885年
夜光雲は、昔から見られる現象ではない。最初に観測されたのは1885年で、その2年前の1883年にインドネシアのクラカタウ火山が火山史上に残る大噴火を起こし、地球の大気中に大量の火山灰が放出されていた。20世紀に入ると、北緯40~50度の地域で頻繁に目撃されるようになった。
NASAは、夜光雲の観測を主な目的とする中間圏観測衛星AIM(Aeronomy of Ice in the Mesosphere:中間圏における氷の超高層大気物理学)を2007年に打ち上げて以来、中間圏に何らかの変化が起きているかどうか、それが地球の気候や太陽周期とどのように関連しているかを調査している。


