宇宙

2025.06.10 14:00

日没後の空にたゆたう不可思議な輝き 「夜光雲」の季節が到来

ロシア西部の中央ロシア地域で2018年6月25日に撮影された夜光雲(Shutterstock.com)

ロシア西部の中央ロシア地域で2018年6月25日に撮影された夜光雲(Shutterstock.com)

北半球に住んでいて、晴れた日が続いているなら、就寝の支度をする前に北東の夜空を見てみよう。はっとするほど美しい光景が見られるかもしれない。それは、ラテン語で文字通り「夜に光り輝く」という意味をもつ雲──「夜光雲(やこううん)」だ。

夜光雲は通常の雲よりはるか上空、大気圏の中でも宇宙に近く最も気温の低い高層大気に生じる雲で、隕石のかけらが残した塵を核としている。夜光雲が観測されやすい季節はちょうど始まったばかり。どのような雲なのか、いつどこで見られるのかなど、その特徴をまとめた。

地球上で最も高い雲

夜光雲は地球で最も高高度に発生する雲だ。大気圏を構成する中間圏と呼ばれる大気層の中でも高度約75~85kmの上部領域、地球の空と宇宙の境目に形成される。

日没後、北東の夜空に輝く

夜光雲は日の出前や日の入り後の薄明の空に観測される。太陽が沈んだ後に輝いて見えるが、必ず出現するとは限らない。ほの暗い空に薄く広がる青い輝きの中で、青みを帯びた白銀の雲の筋が非常に明るい光を放つ。

スウェーデン・ストックホルム上空に輝く夜光雲(Kevin Cho (Kee Pil Cho), CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)
スウェーデン・ストックホルム上空に輝く夜光雲(Kevin Cho (Kee Pil Cho), CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

これは、地上にいる私たちの目にはすっかり日が沈んでしまったように見えていても、薄明の時間帯には太陽がまだ地平線のすぐ下にあり、高い空にできた雲にはしばらく太陽光が当たり続けるためだ。夜光雲を見るのに特別な機材は必要ない。

季節性が高い

夜光雲は、場所にもよるが、ごく限られた時間帯や季節にしか見られない。高緯度地域ほど観測できる可能性が高く、北半球では5月下旬~8月、南半球では11月~2月に出現しやすい。オーロラと混同されがちだが、発生頻度の高い季節が異なる。

中間圏で発生する

夜光雲が形成される中間圏は、厚さ35kmほどの大気の層だ。米航空宇宙局(NASA)によると、北半球でも南半球でも夏の間は、上昇気流に乗って下から水蒸気が上がってくるため中間圏の湿度が最も高くなる。水蒸気は、夜光雲の発生に不可欠な3要素の1つだ。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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