━━なるほど、根深い問題が入ってくるわけですね。
田尻:そうなんです。先ほどの話のように、顧客の真意や課題発見ができていないだけなんです。
では、ここでその目的を整理してみますと、BtoBモデルでの目的は、生産性、財務、CSR、コスト、リスク、付加価値に良い影響を与えること、ということになります。
BtoCモデルやCtoCモデルでの目的は、生活者のより良い生活への変化や人生に感動を与えることになります。それをニーズから発見していく。ニーズの発見については、情報偏差と業界慣例とトレンド。この三つをきちんと探していくと潜在ニーズは見つかるはずです。
ところが、このニーズというものは、もう一段分解しないと本当のニーズは見つからないんです。例えば、この瞬間に何も困っていなくても、今夜家に帰って嫁さんに何かを話そうとした時に何かに困ったり、明日恋人と会う1時間前に化粧品に困ったり、特定の利用シーンを特定した上で困りごとを想像しないと、ニーズは見つからないんです。

この特定の利用シーンを上手く表現しているのが、ラクスの経費精算システム「楽楽精算」のコマーシャルです。
経理担当者が本当に困った場面を映像化している。製品の機能については説明せず、電子請求書を発行すれば楽だとしか言っていない。見ている側にニーズをはっきり示しているので、解決したらどうなるかが容易に想像できるのです。
さらに言うと、絶対に見つけたいのは「潜在ニーズ」じゃないですか。でも潜在ニーズというのはそれこそなかなか見つからないんです。なぜかというと、ニーズの探究とシーズの訴求があるとすると、「潜在ニーズ」が唯一見つかるのはシーズによる理想が刺さったとき、つまり理想とのギャップで見つかるんです。
営業担当の方は、通常「今、何に困っていますか」と聞きますよね。その答えは、すべて「顕在ニーズ」になってしまうんです。お客様は顕在化したニーズしか答えられない。つまり営業担当者に潜在ニーズは見つけられない。見つけられる瞬間は、技術者の方が現場に足を運んだ時に、「え、今ならこれだけの技術があるのに、なぜオフィス(工場)がこの状態なんですか」「AIや技術で、、もうこのように変えられますよ」と気づく。その時みつかるのが、潜在ニーズです。
よく私はトマトを売る話をするのですが、売る側はこのトマトは甘いから高く買ってくださいって言うんです。でも買う側はトマトを買いたいんじゃない。家庭の幸せが欲しいんです。トマト嫌いな自分の子供が唯一食べてくれる美味しいトマトのためなら高くても買うんですよ。
一般的な企業では開発担当者は現場に行くことはほぼない。これでは潜在ニーズは見つからないですよね。潜在化したニーズでなければ、カテゴリーキラーは生まれないので、結果として世界一や業界一を目指してしまう。そして、スペック勝負になりお金もかかるうえに、たいして売れない。一方、カテゴリーキラーは潜在化したニーズなので、そもそもスペックは関係ないし、でた瞬間に売れてしまう。
例えば、今作られていないけれど、作られたとしたら僕は絶対に買いたい製品があって、高齢者向けの洗濯機です。普通の洗濯機はボタンが硬いし、ボタンの位置も上部にある。腰が曲がった高齢者でも押せるボタンにしてほしいし、機能も少なくしてほしい。でも孫の声はIoTで出して欲しいかな。


