━━キーエンスがそうなっているというのは、話を聞くまで知りませんでした。
田尻:私はよく質問するんです。「会社の中で営業と開発が喧嘩をしていませんか」と。
営業担当者は「売れないのは良い商品がないからだ」と言う。開発担当者は「営業力がないからだ」と言う。これは営業の問題でも開発の問題でもないのです。組織構造の問題なのです。
マーケティングとイノベーションの両方を理解し、実践できる人がいない(少ない)。つまり、顧客の潜在課題を見つけて解決する。これを解決した時に価値が生まれるのに、この価値を創造する人がいない。これが価値だ、マーケティングが最大限生かされるんだ、とマーケティングとイノベーションを両方とも理解した方、つまりビジネスができる方が少ないんですよね。

━━それが商品企画であり、そこを育成していかないといけないっていうことですね。
田尻:そうです。我々がコンサルタントとして入った時に、最初に行う多くは営業研修です。なぜか。それは、顧客の真意をしっかりと聞き取れていない会社があまりにも多いからです。
例えば、こういう機材を買ってくださいと言うと、ちょっと今回は価格が高いから買わないと言うじゃないですか。まずそこで、諦めて社内に帰ってきてしまう。じゃあ価格を下げたら買ってくれるか?と聞いたら、そんなことは聞いていないという。こういう場合、「では価格を合わせたら買ってくれますか」と聞いても、いや、そういうわけではないと断られます。
そこから、どうやったら買ってくれますかと聞くと、実は工場のある一定の場所にその機材が入らないから買ってくれなかった、そもそも作ろうとしている商品に対してオーバースペック、大きさが合わない、などということがわかる。お客様は最初から選択肢にないことも多いんですよ。営業が顧客が本当に意図することが聞けていない。必要なスペックの話も表面的にしか聞けていないし、何が実現できたら買ってくれるかというところまでしっかり聞けていない営業がとてもおおい。残念ながらその方々が持ってくる顧客の課題って、商品のきっかけにすらならないんです。
価格が理由だと言われると、開発もそうか価格かと何とか原価低減をしようとするわけです。それでは良いものはできない。そして、顧客の真のニーズは聞けていない中、「開発の思う良いもの」つくろうとする。結局、市場のニーズとマッチしていない開発が行われるわけです。


