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2025.06.11 08:00

人型ロボット開発最大の難関「器用な手」を生み出す義肢メーカーの挑戦

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これらの企業のヒューマノイドへの転向は、賢い判断にも見える。ゴールドマン・サックスが昨年発表したレポートによれば、ヒューマノイドが獲得可能な市場規模は2035年までに380億ドル(約5兆4700億円)に達する見込みという。一方で、米国における四肢切断者や四肢欠損者の人口は約560万人で、市場規模も限られている。しかも、この市場には米国の医療制度を通じてしかアクセスできず、高度な製品の認可を米食品医薬品局(FDA)から受けるためには、何年もの歳月と巨額の資金が必要だ。

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しかし、すべての義肢のスタートアップがこの新たな市場に乗り出しているわけではない。英国ブリストルを拠点とするOpen Bionics(オープンバイオニクス)の共同創業者ジョエル・ギバードは、2014年の創業以来、3Dプリントの人間のためのバイオニックアームを作ることに専念し、累計1800万ドル(約25億9000万円)を調達している。「この業界にいる人なら皆、そういう成長機会については考えている。私の判断が正しかったのかどうかは分からない。でも、少なくとも意識的にそう決めたことは間違いない」

AI搭載の複雑な義手を開発するAtom Limbs(アトムリムズ)の創業者タイラー・ヘイズは、バイオニクスが投資家の注目を集めるためには「ブレイクスルー」が必要だと語る。「大衆の目から見て、はっきりとした技術的ブレイクスルーを誰かの会社が示さない限り、バイオニック義肢が大きく注目されることはないだろう」と彼は述べた。

誇張が多いヒューマノイド市場

もちろん、ロボット用の義手を作るというビジネスも、確実な成功が約束されたわけではない。ロボティクス企業Ambi Robotics(アンビロボティクス)とJacobi Robotics(ジェイコビロボティクス)の共同創業者で、カリフォルニア大学バークレー校の教授でもあるケン・ゴールドバーグは、ヒューマノイドの進歩は「かなりの長いスパンで考えればあり得るが、現在のタイムラインや盛り上がりには誇張がある」とフォーブスに語った。ヒューマノイドの能力をうたう動画は往々にして誤解を招き、舞台裏には必ず「魔法使い」がいるという。

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「現代のロボットは歩いたり運動をすることに関しては、かなりのレベルに達している。しかし、歩き方が人間っぽいからといって人間と同じではない。難しいのは手を使う動作なんだ」とゴールドバーグは指摘した。そのため彼の会社は、荷物をつかんで仕分け作業を行うことに特化したロボットや、物流現場のパレットの上げ下ろしに特化したロボットなどを開発している。

箱を手で折りたたんだり、服をたたむような器用さが求められる作業は、ロボットが苦手とするものだ。だからこそヒューマノイド企業は、この分野の技術でバイオニック義肢に期待を寄せている。「こうした作業を本当に自動化するための道のりは、まだまだ長い。ロボットにとって器用な手の動きを実現するのは、驚くほど高いハードルなんだ」とゴールドバーグは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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