アジアのベンチャーキャピタル(VC)による投資はここ1年ほどの間、米中の対立や中国の景気低迷を受けて低下していた。しかし、今年初めに中国の人工知能(AI)スタートアップ「DeepSeek(ディープシーク)」が予想外の台頭を遂げたことで、中国のハイテク業界に再び注目が集まっている。
フォーブスが世界のトップ投資家を選ぶ年次リスト「Midas List(ミダスリスト)」の2025年版には、15人のアジアの投資家が入ったが、これはTikTokの親会社のバイトダンスやファストファッション大手のSHEIN(シーイン)などのメガスタートアップの評価額が急騰したことを受けてのものだ。このうち14人は中国を拠点とする投資家で、唯一の例外はシンガポールのGranite Asia(グラニテ・アジア)に所属するジェニー・リーだった。
アジア勢のトップに立ったのは、昨年に続いて紅杉資本(ホンシャン・キャピタル)の創業パートナーであるニール・シェンだ。かつてセコイア・キャピタル・チャイナとして知られた同社を率いる彼は、バイトダンスへの初期投資から莫大なリターンを上げている。
紅杉資本が最初にバイトダンスに投資したのは2014年のことで、当時の評価額は4億6500万ドル(約670億円)だった。しかし、その後のTikTokの爆発的人気とAI分野での取り組みを受けて同社の評価額は3000億ドル(約43兆4000億円)を突破した。これにより、シェンは今年のミダスリストで総合4位にランクインした。
ここ1年で複数の紅杉資本の投資先が上場を果たしている。その中の一つ、北京を拠点とする自動運転向けAIチップ大手の「ホライズン・ロボティクス(地平線機器人)」は、昨年10月に香港取引所で新規株式公開(IPO)を行い、株価は初日に80%以上上昇した。他にも、自動運転タクシーの運営会社の「Pony AI(ポニーAI)」が11月に米ナスダックに上場し、AI創薬のスタートアップ「Xtalpi(晶泰科技)」が6月に香港市場にデビューした。
アジアで2位につけたのは、総合で12位に入った「5Yキャピタル」創業パートナーのリチャード・リウだ。5Yキャピタルは、香港の不動産王ロニー・チャンの「モーニングサイド・グループ」から分離して誕生したファンドで、これまでに中国のライドシェア大手の滴滴出行(ディディ)やバイトダンス競合の快手(クアイショウ)、スマートフォンメーカーの小米(シャオミ)、電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車(シャオペン)などに出資している。加えて、前述のホライズン・ロボティクスやポニーAI、Xtalpiへの投資も行っている。



