話してもらえる存在になれるか
CEOの時間を生んだり意思決定の質を高めるだけでなく、チームの潤滑油として機能することも求められるCoS。他の職種とは動き方もカバーする領域も異なる仕事だが、どのような資質や姿勢が求められるのか。
CoS経験者からは、「話してもらえる信頼関係を構築していくこと」が重要だという声があった。原氏は、先に紹介したように部門を横断してボトルネックを解消するという仕事を担っており、そのために各部署の会議に参加をするなどして、現場の動きや課題を理解するよう務めた。
ただ、こうも言う。「それぞれのメンバーは各部署で専門性をもって仕事をしています。そのなかで専門家でない私がボトルネックを見つけるには、各メンバーと信頼関係を構築して、ときには教えてもらうことも必要でした。だから、付加価値をつけることが必要だと考えています」。彼の言う付加価値とは、原氏が現場に入ることによって、部署や会社全体にもたらされるメリットのこと。彼が現場に入っているのはなぜか。その理由について、周りが納得している必要があるのだ。原氏はメンバーと食事に行くなどして交流をもつようにし、組織内での信頼醸成に務めた。
オイシイファームの前原氏は次のように話す。
「CoSの仕事をうまくやるには、情報が自然と自分に入ってくる状態を作れるかどうかがカギ。経営陣でも現場のメンバーであっても、この人(前原氏)に話せば、情報が意図しない形で流れていくことはないだろうと思ってもらえることが重要です。情報が入ってくるようになれば、あとはそれを精査して、すぐに解決すべきかどうかを判断すればいい」
CoSを雇う側からは、適性の一つとして「ポジティブであること」が挙がった。
「他の職種と違って、CoSは自分が専門性を持ち合わせていないところにばかり飛び込んでいく仕事。基本的に成功体験より失敗体験が先に来るので、そういうときに折れずに自己肯定感が下がらない人が向いていると思います」(坂本CEO)
そのほか、自ら学ぶ自立性や体力なども、CoSを務めていくうえで求められる要素との意見があった。
CoS卒業後のキャリア
では、CoSはキャリアとしてどのようなステップを歩んでいくのか。HQの坂本CEOは「CoSは長くやるべき仕事ではない」と主張し、同社で働くCoSには、2〜3年で卒業と伝えているという。
CoSはCEOをはじめ経営陣と極めて近い距離で仕事をするが、事業責任は追っていない。そのため、「CEOの理解は深まるが視座だけが上がってしまう」(坂本CEO)のだ。だからこそ一定の期間で卒業し、次のステップに進んでいくことが望ましい。
実は米国では、CoSがCEOや投資家になるための登竜門になっている。米アマゾンCEOのアンディ・ジャシーは1997年に入社し、2000年代初頭はジェフ・ベゾスのCoS(呼び方はシャドー・アドバイザー)を務めた。ベゾスが出席する全ての会議に同席し、仕事をそばで見て学んだという。イーロン・マスクのCoSだったサム・テラーはベンチャーキャピタルのパートナーになっている。日本でも、今回登場した原氏は「将来的に起業する」と入社時に伝えたうえでCoSに就き、その後、企業の海外展開を支援するLeapを創業した。社内でキャリアアップをしていくパターンもあり、前原氏はCxOとして事業や戦略をリードする立場を目指している。
最近のスタートアップでは、海外進出や複数のプロダクトを展開する企業も多くなっている。そうしたなかでCEOは、より限られた時間のなかで事業全体の優先順位を判断し、スピーディーな意思決定をしていくことが求められる。CoSの存在価値が高まっている。


