尾羽は全部で16本ある。カーブし、ねじれた最外側の長い2本、中央のフィラメント状の2本、ちらつく光のようなレース状の飾り羽12本で構成される。こうした特異な構造により、光の反射と屈折が生じ、かすかだが、まばゆいきらめきを帯びる。クジャクのような派手な輝きというより、むしろ繊細なレースを陽の光にかざしたような印象だ。
コトドリがひときわ魅力的な理由は、彼らの美しさが視覚的なものにとどまらないことにある。コトドリの歌は、鳥類界で最も複雑といっても過言ではない。彼らは鳴き真似の名手で、ほかの鳥のさえずりだけでなく、チェーンソー、カメラのシャッター音、車の盗難防止アラーム、さらにはヒトの声まで、恐るべき正確さで再現する。なかには、一度しか聞いたことのない環境音をまねる個体もいる。
視聴覚を駆使した魅惑の求愛ディスプレイは、メスからよく見えるように、森のなかの低層の枝や塚の上で繰り広げられる。オスは、ディスプレイの手順を入念に練習する。見た目と、さえずりの美しさの比類なき融合は、コトドリが動物界屈指のパフォーマーと呼ばれるゆえんだ。
美しい尾羽をもつ、(クジャク以外の)ほかの鳥たち
鳥の世界には、クジャクとコトドリのほかにも、目をみはるような尾羽をもつ種がいる。絢爛豪華なクジャクにも負けない、見事な尾羽をもつ種を、あと2つ紹介しよう。
まずはケツァール(カザリキヌバネドリ)だ。中米の雲霧林(霧が多く湿度の高い場所に発達する、熱帯・亜熱帯山地の常緑樹林)に生息するこの鳥は、古代マヤ文明やアステカ文明で神聖視された。光沢のある緑色の体、鮮烈な赤い胸、そしてオスでは90cmに達する長い尾羽をもつ。
ケツァールの尾羽は虹色に輝き、光の角度によって、色が変わるように見える。これは、色素ではなく、羽の微細構造によって生じる特徴だ。尾羽はただの飾りではなく、求愛の儀式のなかで重要な役割を担う。樹冠からゆっくりと舞い降りるオスのパフォーマンスのなかで、たなびく尾羽がメスの注意を引くのだ。
続いて紹介するのは、インドのカワリサンコウチョウ(英名:paradise flycatcher)だ。すらりとしたこの鳥は、吹き流しのような長い尾羽で知られ、繁殖期のオスでは、胴体の長さの2倍以上に達する。カワリサンコウチョウが、森のなかで飛翔する昆虫を追い、木々の合間を縫って飛ぶと、彼らの尾羽は背後に優雅にたなびく。
羽色には、白から赤褐色まで個体差がある。どんな羽色の個体であれ、流線型の体と長いリボンのような尾羽のコントラストは、一度見たら忘れられない光景だ。


