サイエンス

2025.06.11 18:30

人を襲う世界で最も「攻撃的」な飛べない鳥 高さ最大180cm、長さ12cmのかぎ爪

ヒクイドリの頭部(Shutterstock.com)

ヒクイドリのかぎ爪(Shutterstock.com)
ヒクイドリのかぎ爪(Shutterstock.com)

ヒクイドリが人間を襲った事例は、数多く記録されている。最も有名なのは1926年に起きた事例で、棍棒でヒクイドリを殴ろうとした16歳の少年が逆に殺されたと伝えられている。

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死に至る遭遇は極めて稀だが、重傷を負う例はまれとは言えない。オーストラリアの、とりわけ人間とヒクイドリが頻繁に遭遇する地域では、野生生物を管理する機関の職員が、ヒクイドリを安全に管理するための手順を策定しなければならないほどだ。

(余談:陸上ではヒクイドリの威力に匹敵する鳥はほとんどいないが、空を支配する鳥のなかにならいる。世界最強の飛ぶ鳥に会いにいこう──この鳥も人間を攻撃できるし、実際に攻撃している)

ヒクイドリを際立たせているのは、その攻撃性だけではない。スピードと敏捷性もすごい。時速48kmものスピードで走れる上に、高さ1.5mの跳躍もこなせる。おまけに水泳もできる。おかげでヒクイドリは、生息環境であるうっそうとした熱帯雨林で、いっそうおそるべき存在になっている。

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なぜヒクイドリはそれほど攻撃的なのか? 一説によれば、単独生活を送る習性と、子育てへの投資の大きさに理由があるという。卵を産むのはメスだが、卵を温めてかえし、ひなを単独で育てるのはオスだ。このように単独で子を守る習性が、脅かされたときや、驚いたときの攻撃性につながっているとも考えられる。

ヒクイドリが人間と接触する場所(トレイル、郊外の辺縁部、観光地など)では、衝突があっという間にエスカレートするおそれもある。

ヒクイドリは悪者ではないと保護活動家は強調する。その攻撃性は、生まれもった防衛機構だ。さらに、植物を食べて種子をばらまくヒクイドリは、生態系で重要な役割を果たしている。ヒクイドリがいなければ、一部の植物種は存続に苦労するかもしれない。

大切なのは、恐怖ではなく敬意だ。安全な距離を保ち、餌をやったり、刺激したりするのを避けるようにすれば、平和な共存を目指せるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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