サイエンス

2025.06.11 18:30

人を襲う世界で最も「攻撃的」な飛べない鳥 高さ最大180cm、長さ12cmのかぎ爪

ヒクイドリの頭部(Shutterstock.com)

ヒクイドリの頭部(Shutterstock.com)

「飛べない鳥」について考えたときに真っ先に思い浮かぶ言葉は、たぶん「攻撃的」ではないだろう。

動物園の敷地内を穏やかに歩きまわるクジャクを思い浮かべる人もいるかもしれない(ただし、クジャクは厳密に言えば飛べない鳥ではなく、短距離なら飛べる)。モーリシャス島にいた不運なドードーを思い浮かべる人もいるだろう。この鳥はひどくおとなしく、周囲の脅威をおそれなかったばかりに、100年も経たないうちに狩り尽くされて絶滅してしまった。

あるいは、ダチョウを思い浮かべるかもしれない。世界最大の飛べない鳥であるダチョウは、たしかに人間にとって危険となることもある。ダチョウの強力な脚に蹴とばされて重傷を負った人の事例もいくつか記録されている。

だが、あなたがオーストラリア北部かニューギニア地域に住んでいるのなら、本当に気をつけないといけない鳥はヒクイドリだ。ここでは、ヒクイドリの物語と、この鳥が人間にとって危険な理由をひもといていこう。

飛べない鳥ヒクイドリ──その侮れない力

ヒクイドリの見た目は、白亜紀から出てきたようだ。まっすぐに立ったときの背の高さは最大180cmほどで、体重は大きいもので60kg近くになる。堂々たる姿であるのは間違いない。

つやつやとした黒い羽毛は、きめの粗いマントを思わせる。頭頂には、ヘルメットのような兜状の突起がある。ケラチン質のこの構造にどういう機能があるかについては、まだ論争が交わされている。うっそうとした森を歩きまわるのに役立つと主張する生物学者もいれば、ヒクイドリの野太いゴロゴロという鳴き声を増幅しているとする説もある。

ヒクイドリ(Shutterstock.com)
ヒクイドリ(Shutterstock.com)

ヒクイドリは縄張り意識の強さで知られ、とりわけメスはその傾向が強い。メスはオスよりも大きく、攻撃的だ。自分の縄張りを猛然と守り、脅かされたと感じたら、おそれることなく突進する。

真の危険は、ヒクイドリの脚にある。足にはそれぞれ3本の指があり、内側の指には長いもので12cmにもなる、短剣のようなかぎ爪がついている。このかぎ爪はただのはったりではなく、強力な武器になる。深い裂傷、時には死に至る傷を負わせる威力があるのだ。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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