英国政府による市場活性化の取り組みが効果を上げていない
しかし、最大野党・保守党の「影のビジネス貿易大臣」であるアンドリュー・グリフィスは、「素晴らしい英国のフィンテック企業」が英国から離れようとしているとして、その責任を労働党政権に押しつけた。
「フィンテック分野では他にもRevolut(レボリュート)がパリに進出し、富裕層はロンドンから逃げ出している。これは富の創出者らが社会主義政権に反発していることの現れだ」とグリフィスはX(旧ツイッター)に投稿した。
レボリュートは先月、パリに新オフィスを開設するという発表とともに、今後3年間で11億ドル(約1584億円。1ドル=144円換算)を投資し、200人の新規雇用を創出する計画を明らかにした。同社はグローバル本社をロンドンに維持するとしているが、共同創業者兼CEOのニック・ストロンスキーは以前、現在の状況では「ロンドンでの上場は理にかなっていない」と述べていた。
英国のスカイニュースは先日、財務省のエマ・レイノルズ経済担当大臣とロンドン証券取引所のCEOらが、デジタル銀行Monzo(モンゾ)やレボリュートなどを交えた会合を開き、ロンドンでの上場を促したと報じていた。
しかし、レボリュートが米国での上場を目指す動きは、英国政府が資本市場の活性化を目指して進めてきた取り組みが効果を上げていないことを明確にしている。ロンドン市場では近年、スポーツベッティング大手Flutter、建築関連のCRHなどが上場先を米国に移しており、ケンブリッジ拠点の半導体設計企業Arm Holdings(アームホールディングス)の新規株式公開(IPO)も、ニューヨーク市場に奪われた。
ワイズの時価総額は約2.1兆円に到達
かつて「TransferWise」の名で知られたワイズは、2021年にロンドン証券取引所で上場した際、同市場で史上最大規模のテック上場となった。同社の現在の時価総額は、約110億ポンド(約2.1兆円。1ポンド=195円換算)に達している。
2011年にエストニア出身のカールマンとターベット・ヒンリクスによって創業されたワイズは、迅速かつ低コストの国際送金サービスの提供を目指してきた。同社の3月31日までの1年間の国際送金取扱高は、前年比23%増の1452億ポンド(約28.3兆円)に達した。また、税引前利益は17%増の5億6500万ポンド(約1101億7500万円)だった。
カールマンは、自社の新たな決済インフラが従来の銀行間取引ネットワークよりも「速く、安く、信頼性が高い」と主張している。「当社は、数十億ドル(数千億円)単位ではなく、数兆ドル(数百兆円)単位の資金を扱うネットワークに進化しつつあり、世界で唯一のグローバルマネーのネットワークになる道を歩んでいる」と彼は語った。


