月が「静止」して見えるとき
今年6月の満月の高度がとりわけ低い理由が、もうひとつある。月の公転軌道面(白道面)と地球の赤道面の傾きの角度が、今は約1年間にわたって最大化している時期に当たるからだ。
地球の地軸は公転軌道面(黄道面)に対して約23.5度傾いているが、白道面は黄道面に対して約5度傾いており、傾きの方向は約18.6年周期で回転している。この2つの傾きの方向が18.6年に一度そろうと、白道面と赤道面の傾きの角度は28.5度となり、地球から見た月の通り道は太陽よりも大きな幅で南北に移動する。このように月の出入り方位が最も南寄りになる状態と最も北寄りになる状態の変動幅が最大になるときを「Major Lunar Standstill」と呼ぶ。
実際、2025年6月の月は、2006年以来最も南東の方角から昇り、夜通し空の低い位置を移動し、最も南西寄りの地平線に沈む。南中高度は冬至の頃の太陽より約5度低い。なお、lunar standstillという言葉は、夏至や冬至を指す単語「solstice」がラテン語で「太陽(Sol)の動きが止まる(sistere)」という意味であるのにちなんだ表現で、月が最南・最北から昇る前後で出入り方位の変化が止まって見えることに由来し、「lunistice(ルニスティス)」とも呼ばれる。
次の満月は「バックムーン」
今回のストロベリームーンは、2025年に12回訪れる満月の6回目に当たる。地球が太陽の周りを公転する周期(1太陽年)は約365.24日だが、月の満ち欠けを基準とした太陰暦に基づく1年(1太陰年)は約354.37日であるため、2023年や2028年のように1年間に満月が13回訪れる年もある。
今年12回ある満月のうち、3つは地球に近い「スーパームーン」で、2つは「ブラッドムーン(血色の月)」の通称で知られる皆既月食だ。1回目の皆既月食は3月13~14日に起こった。2回目は9月になる。
次の満月は7月11日(金)の「バックムーン」だ。夏至の日を境に天文季節の夏が始まって最初の満月となる。


