スペインは深刻な住宅危機に見舞われている。状況を悪化させているのがオーバーツーリズム(観光公害)や民泊の拡大、外国人による不動産投資だ。政府はここへきて対策に本腰を入れ、一定額以上の投資を条件に在留資格を付与する「ゴールデンビザ」制度の廃止や、米民泊仲介大手Airbnb(エアビーアンドビー)の違法物件6万5000件超の掲載削除、欧州連合(EU)域外の居住者による不動産購入に対する100%の課税案など、思い切った措置を次々に打ち出している。スペインは向こう3年で外国人労働者を3万人受け入れることも計画しており、オーバーツーリズム問題の解決は喫緊の課題だ。
家賃高騰に地元民から怒りの声
スペイン消費者権利省は5月、Airbnbに掲載されている国内の物件6万6000件近くの削除を命じた。オーバーツーリズムを抑制し、住民のために住宅を確保する狙いがある。
政府側はこれらの物件について、届け出番号の不記載や偽造、不明確な所有者情報など、短期の住宅賃貸に関する規則への違反があったと説明している。Airbnb側は異議を申し立てたものの、マドリードの高等裁判所は政府側の主張を支持した。
スペインでは2024年11月時点で、住宅およそ32万1000戸がバケーション向け賃貸の許可を取得しており、4年前に比べて15%増加している。
スペイン政府は、観光による利益と住宅ニーズとのバランスをとることに腐心している。たとえばバルセロナは、地元住民が手ごろな価格の住まいを見つけられるように、2028年までに短期賃貸物件約1万件すべてを禁止する方針だ。
スペインの民泊物件は、マドリードやアンダルシア、カタルーニャ、バレンシア、バスク、バレアレス諸島といった人気観光地に集中している。これらの地方では2024年、住宅不足や家賃高騰に対する地元住民の抗議デモが相次いだ。なかには家賃が過去10年で80%も上がった場所もある。
欧州でこうした問題に悩まされているのはスペインだけではない。6月15日には、いくつかの活動家団体がEU各地でオーバーツーリズムに対する一斉の抗議行動を計画している。団体側は、住宅不足や家賃高騰、汚染、公共交通機関の混雑に表れているように、観光の成長に歯止めを掛ける必要は切迫しているとの認識から、こうした協調行動が求められるとしている。



