2025.06.09 09:00

各国の投資移民制度、世論を二分するも需要はうなぎ上り 今後の動向は?

マルタの首都バレッタ(Arcady / Shutterstock.com)

投資移民制度を支持する側の見方

一方、こうした制度の支持者も数多くいる。欧州司法裁の判決に先立ち、マルタのロベルト・アベラ首相は、同国のゴールデンパスポート制度は安全で、国に利益をもたらすと述べていた。マルタ政府は2015年以降、同制度を通じて14億ユーロ(約2300億円)を超える収入を得たとしている。

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先述のカサブリCEOは、これらの制度は、加盟国の主権の範囲内にある合法的で明確な手段であることに変わりはないと説明。申請者はマルタでの居住期間を含む厳格な資格要件を満たし、国家の発展に意義のある貢献をしていると述べた。

世論を二分する投資移民制度

ヘンリー&パートナーズは、投資制度を通じた移住者の数は依然として増えており、今回の判決によってこの動向が変わることはないとみている。同社で個人顧客を担当するドミニク・ボレクは、地政学的な不確実性が続く中、家族の身の安全や遺産相続計画への関心が高まっていることで、富裕層からの需要は急速に伸びていると説明した。同社の最大の顧客基盤は北米の富裕層だという。

ボレクは、EU域内と域外の国々の居住権制度を組み合わせることで、移住先を多様化し、規制や風評のリスクを軽減することができると考えている。こうしたことから、オーストリアやギリシャ、アラブ首長国連邦(UAE)、カリブ海諸国、ナウルなど、明確な法的枠組みの下で投資移民制度を運用している国は、今後も引き続き強い関心を集めるだろうと述べた。ヘンリー&パートナーズによれば、投資移民法が制定されている国は世界に100カ国あり、うち60カ国以上が積極的に運用しており、特に多くの申請者を集めている国は約30カ国に上るという。

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同社は、制度の運用国にとっては貴重な資本や人材を受け入れることができ、申請者にとっては安定と機会が得られるという、双方にとって有利な状況が生み出されていると考えており、今後も拡大が期待できるとしている。米国、カナダ、UAE、香港、シンガポール、ニュージーランドはいずれも投資移民に対する機会を拡大しており、その意味でEUは「最も余裕がない時に跳ね橋を引き上げている」とボレクは考えている。欧州司法裁がゴールデンパスポート制度は違法との判決を下した今、EUが財源を増やす方法を逃しているかどうかは今後明らかになっていくだろう。

投資移民制度は受入国の経済成長という期待と、公平性や安全保障に対する懸念とのバランスを取りながらも、依然として世論を二分している。しかし、明らかなのは、欧州司法裁がマルタのゴールデンパスポート制度を違法と判断したにもかかわらず、多くの人がこうした制度に対する需要は今後も伸び続けるとみていることだ。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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