2025.06.09 09:00

各国の投資移民制度、世論を二分するも需要はうなぎ上り 今後の動向は?

マルタの首都バレッタ(Arcady / Shutterstock.com)

マルタの首都バレッタ(Arcady / Shutterstock.com)

ゴールデンパスポート(旅券)やゴールデンビザ(査証)は、多額の投資と引き換えに、富裕層に市民権や居住権取得の近道を与える制度だ。他方で、こうした制度は貧富による不平等を助長し、悪用される危険性があるとの批判もあり、論争がないわけではない。

地中海に浮かぶ島国マルタのゴールデンパスポート制度を巡り、欧州連合(EU)の最高裁に当たる欧州司法裁判所は4月、違法であるとの判決を下した。今回の判決について、知っておくべきことは以下の点だ。

・マルタのゴールデンビザ制度は依然として有効だ(違法と判断されたのはゴールデンパスポート制度だ)

・他国のゴールデンビザ制度は影響を受けず、ポルトガルのように結果的に申請者の増加を見込んでいる国もある

・恐らく終了しなければならないという事実は、これらの制度の終着点ではない。業界関係者は、特に米国人の間で需要が高まっていると分析している

ゴールデンパスポートとゴールデンビザの違い

ゴールデンパスポートやゴールデンビザは、第三国に投資する富裕層に市民権や居住権取得への近道を提供する制度だ。投資に求められる金額は国によって異なる。例えば、ラトビアのゴールデンビザは最も利用しやすい制度の1つで、最低金額は5万ユーロ(約830万円)となっている。

ゴールデンパスポートとゴールデンビザの違いは、前者は即座に「市民権」を得られるという点だ。EUでは主に、数年後に市民権を取得できる可能性のある「居住権」を付与するゴールデンビザ制度を運用している国が多い。

違法と判断されたマルタのゴールデンパスポート制度

マルタは最高の投資移民制度を運用している国としてよく取り上げられる。例えば、英コンサルティング企業ヘンリー&パートナーズが実施した2025年世界市民権制度ランキングでは、マルタが10年連続で1位に君臨している。

だが、EUの執行機関である欧州委員会は、マルタがEU市民権を「商品化」し、他の加盟国との相互主義に反する行動を取っているとして、同国を提訴していた。欧州司法裁はこの訴えを認め、マルタのゴールデンパスポート制度がEUの条約に違反しているとの判断を下した。EUでは、キプロスが2021年に、ブルガリアが22年にゴールデンパスポート制度を終了している。

マルタ政府は現在、法的影響について調査中で、ゴールデンパスポート制度を廃止するか、判決で示された原則に沿うよう検討していると言明した。現状の制度を維持した場合、さらなる法的措置や罰金が科される可能性がある。

投資移住コンサルティングを手がけるグローバルシチズン・ソリューションズのパトリシア・カサブリ最高経営責任者(CEO)は、今回の判決前にマルタ当局に提出された申請については、これまで通り処理されると期待している。同CEOは、欧州司法裁の最近の判決は過去にさかのぼって適用されるものではなく、すでに付与された市民権を無効にするものではないと説明した。

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翻訳・編集=安藤清香

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