テスラはすでに、厳しい四半期を迎えており、米国だけでなく欧州と中国でも販売不振に直面している。そして、トランプが来月にも署名しようとしている予算案は、EV購入に対する連邦税額控除や各種のインセンティブを廃止する内容となっており、テスラにとってさらなる痛手となる。
EV向けの税額控除が復活する可能性はさらに低下
トランプは5日の自身のSNSの投稿で、マスクがこの法案に反対しているのは税額控除の廃止に不満を持っているからだと主張したが、マスクはこれまで一貫して税額控除の廃止を支持すると公言してきた。それでも、最終的な法案においてEV向けの税額控除が復活する可能性は、今回の対立によりさらに低くなったと見られている。
「マスクがトランプやほとんどの共和党に喧嘩を売ったことで、下院も上院も、マスクやテスラへのお情けとして税額控除を残すという判断はまずないだろう」と専門家は述べている。
マスクは、以前から公の場での発言を制御できておらず、さまざまな問題を引き起こしてきた。彼は、2018年に「テスラを非公開化するための資金を確保した」と虚偽のツイートをしたことでSECから罰金を科され、会長職を失った。また、批判者を「小児性愛者者」と呼んだことで名誉毀損で訴えられ、法廷に立つことにもなった。こうした言動は投資家の間でも懸念されており、特に公的年金基金などは、テスラの取締役会がマスクの行動を制御できていないことに強い不満を抱いている。
「マスクのように日々の業務をここまで放棄してきた上場企業のCEOは、他に誰もいない」とイリノイ州の投資を監督する州の財務官のマイケル・フレリクスはフォーブスに語った。「そして、個人的な言動によって企業やブランドの評判をこここまで傷つけた人物が、ここまで許されてきたケースが他にあるだろうか?」と彼は問いかけた。
トランプの怒りを買ったマスクとテスラは、今後さらに厳しい状況に追い込まれる可能性がある。当局による調査の再開から、マスクが大々的に宣伝してきたテスラのロボタクシー計画への妨害まで、あらゆるかたちでの報復が考えられる。
「トランプは、テスラのロボタクシーを妨害するために、あらゆる手を尽くす可能性がある。『ウェイモこそが最高だ』『テスラはウェイモに比べて悲惨なほど遅れている』と言い出しても、まったく驚かない」とEV業界のデータ会社Parenの主任アナリストのローレン・マクドナルドは語る。


