米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とドナルド・トランプ米大統領の対立が公になったことを受け、米金融大手ゴールドマン・サックスは5日、テスラの第2四半期の販売台数予測を36万5000台に下方修正した。アナリストのコンセンサス予測は40万5000台だった。米金融データ企業ファクトセットが伝えた。
これは前年同期比18%の減少となり、テスラの投資家向け広報ウェブサイトに掲載されている四半期販売データの範囲では、少なくとも2015年以降最悪の数字となる。
アナリストらは、同社はすでにEV購入者の基盤だった左派層の間でブランド感情が低下し苦境に陥っていたが、今週明るみに出たマスクCEOとトランプ大統領の確執によって、さらなる重圧がかかる可能性があるとみている。
テスラ株は6日に反発し、6%上昇した。だが、テスラの株価は4日から9%下落しており、6日の上昇も前日の歴史的損失のごく一部を回復したに過ぎない。米投資銀行TDコーウェンのアナリスト、イテイ・ミカエリは、マスクCEOとトランプ大統領の対立は「テスラの短期的な不確実性を明らかに高めている」と指摘した。米金融大手モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナスは6日、マスクCEOは大統領との確執によって「(一時的に)政治的に多方面から疎外される可能性がある」と警告した。
この騒動のさなか、トランプ大統領は、マスクCEOが経営する複数の企業との政府契約を解除する可能性を示唆した。その場合、マスクCEOが率いる米航空宇宙企業スペースXは収益の大部分を政府契約に頼っているため、テスラよりはるかに大きな打撃を受けるものとみられる。だが、トランプ大統領がテスラの収益を直接狙う可能性もある。
米金融サービス企業モーニングスターのストラテジスト、セス・ゴールドスタインは、トランプ大統領がテスラの炭素排出規制クレジットの販売能力を制限する可能性があるとみている。テスラはガソリン車メーカーに規制クレジットを販売することで実質的に無償で利益を得ている。トランプ大統領がこの販売を制限した場合、テスラの利益が劇的に落ち込む可能性がある。実際、同社の第1四半期の純利益は9億3400万ドル(約1400億円)だったのに対し、規制クレジットの売上高は5億9500万ドル(約862億円)で、クレジット販売から得た利益は純利益の約3分の2を占めている。
マスクCEOが2022年に米短文投稿サイト「ツイッター(現X)」の買収を発表して以降、テスラ株はたびたび下落圧力に直面してきた。テスラの最高意思決定者であり株主でもある同CEOが政治的発言力を強め、多くの論争を巻き起こしたためだ。
マスクCEOは昨年7月、米大統領選挙戦で当時のトランプ候補への支持を表明し、2億8800万ドル(約417億円)を寄付した。第2次トランプ政権が発足すると、大統領の側近として厚遇された。他方で、トランプ大統領との親しい関係が主に左派層に顧客基盤を持つテスラに負の影響を与え、同社の売上は全世界で落ち込んだ。
米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領がテスラ車の「モデルS」を売却することを決めたと報じ、マスクCEOとの関係は今後さらに冷え込むものと予測している。
テスラは7月2日に第2四半期の販売台数を報告する予定。



