トランプ2.0の前から、中国政府は何十兆元もの地方政府債務の削減に取り組んでいた。最新のトランプ関税が課される前から、習率いる共産党政権は、輸出と過剰投資に依存した成長モデルから、内需主導型の成長モデルへの転換を図っていた。非効率な国有企業の支配力を弱めることや、世界の貿易や金融での人民元の使用を拡大することにも努めていた。
習のチームは、抗議行動の顕著な増加への対処にも追われている。とくに、輸出の伸びが鈍化するなかで、工場労働者による賃金未払いなどへの抗議行動が相次いでいる。こうした状況に追い打ちをかけたのがトランプ関税やドルの不安定化、米国債市場の混乱であり、これらによって中国への逆風はますます強まるという構図になっている。
つまり、巨大で不均衡、そしてトランプの攻撃を直接受けている経済大国を率いる指導者は、山積する課題に忙殺されているのだ。それなのにホワイトハウスは、すべて中断して急いで貿易ディールを結ぶ頃合いだと考えているのだろうか。
貿易協定をまとめるのは、最良の条件が整っている時期ですら非常に複雑な作業であり、数カ月、場合によっては数年かかる。だからこそ、交渉をあえてゆっくり進めるという習の戦術は理にかなっており、実際、それはこれまでうまくいっている。
しかも、大統領に関税賦課の権限があるとするトランプの主張は、米国の裁判所で最終的に退けられる可能性もそこそこあるという点も考え合わせると、習の引き延ばし戦術はますます理にかなっている。
トランプは当然、関税が有効だということを米国民に納得させるべく、どんな形であれ貿易ディールを結ぶことに躍起になっている。トランプは5月上旬、英国との合意を華々しく発表したが、これは数に入らないだろう。なぜなら米国は英国との間ではすでに貿易黒字だからだ。
日本は、トランプが期待していたほど従順な相手ではなかった。隣の韓国でこのほど就任した李在明(イ・ジェミョン)新大統領は、トランプワールドと意気投合するようなタイプではなく、むしろ「韓国のバーニー・サンダース(進歩的左派の米上院議員)」のような人物だ。


