国内では「着るエアコン」としても知られるソニーのウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET(レオンポケット)」シリーズの最新モデル、REON POCKET PROが本格的な世界展開を広げる。特に中東地域での厳しい暑さへの対応力が注目されている。筆者はアラブ首長国連邦(UAE)の大都市ドバイでその実力を検証した。さらに中東市場がこの新しいデバイスに寄せる期待感をSony Middle East and Africaの担当者に聞いた。

誕生から5年を迎えたソニーの着るエアコン「REON POCKET」
REON POCKETは、専用ネックバンドで首もとの肌に直接あてて使うウェアラブルデバイスだ。本体に組み込まれたペルチェ素子が電圧によって発熱・吸熱(冷却)し、プレート部分を冷やしたり温めたりすることで、涼しさや温かさを感じられる。冷風を送り出すハンディファンとは異なるタイプの製品で、寒い冬には身体を温めるためにも使える。
REON POCKETシリーズはソニーのクラウドファンディングプロジェクトから誕生した。2019年7月にプロジェクトが公開され、期限内に目標金額の6600万円を達成。4200人を超える支援を得て2020年3月から支援者に提供された。同年7月には一般販売もスタートしたが、発売日からわずか2日で初回出荷分が完売するなど大きな反響を呼んだ。
その後も毎年新商品がアップデートされ、2024年4月1日にはソニーグループから独立したソニーサーモテクノロジーがREON事業、ならびに法人向けサービスの「REON BIZ」を展開している。代表取締役は伊藤健二氏だ。
2024年春に発売されたREON POCKET 5は、冷却効果や連続駆動時間が前のモデルからさらに向上した。外部センサー「REON POCKET TAG」との連携で直射日光を検知し、屋外や窓際などの陽射しの強い場所でも冷却効果を発揮する。

そして2025年5月には、プロフェッショナルグレードのパワフルな冷温感効果を持つフラグシップモデルとしてREON POCKET PROがラインナップに追加された。ソニーストアでの価格は、専用ネックバンド同梱パッケージ「RNPK-P1」が税込2万7500円で発売中。PROの発売後も販売を継続するREON POCKET 5は税込1万9800円となる。
冷感パワーが大きく向上したPRO
REON POCKET PROは従来のナンバリングモデルから大きく変貌を遂げた。主な進化点は3つある。
本体デザインが「く」の字形に変更され、冷温プレートの面積がREON POCKET 5の2倍に拡大した。首もとにぴたりと触れるプレートの内部には2つのペルチェ素子を搭載。それぞれを交互に駆動させる「DUALサーモモジュール」方式により「冷たさ慣れ」を防ぐ。また改良された放熱ファン、ヒートシンクによりデバイスの内部にこもる熱を効率よく逃がせる構造としたことで、「着るエアコン」としての冷たさが長く持続する。

新しいデザインはフィット感の向上にもつながっている。REON POCKETは首もとに密着させることで効果を最大化できるが、姿勢の変化などで密着状態が変わり、冷温感を感じにくくなることがあった。体格の大きなユーザーから、密着感をさらに高めてほしいという要望が寄せられていたことから、くの字型のプレートを首もとに密着させる新たなデザインの発想が生まれた。
3点目は、本体のボタンによる操作性が向上したことだ。これまでのモデルは専用アプリでの操作を基本としていたが、PROでは電源のオン・オフ、モードや強弱の設定変更が本体ボタンからすばやくできる。例えば製造・物流の現場でグローブをしたまま作業に従事するユーザーも、本体を直接操作しやすくなる。
